声2
文字数 1,163文字
それにしても!
複数の方術も使えるって、なんてずるい杖を持ってるのよぉ!
チート! チートはよくないと思います!
離れた距離では方術が、中間距離で槍が、懐に入ると剣とメイスが。そしてこちらの攻撃をきっちり防ぐ盾がある。
ああもう!
こっちは初めて手にした剣一本しかないのに!
でも、この子じゃなければ化け物と戦えてないのも事実。
まるで何十年もいっしょに過ごしているみいな安心感のおかげで五本腕の攻撃をしのげている。
ザンヤを手にしてから右目が霞んでいる。
精神に影響を及ぼす方術を受けていたらヤバい。
どういう形であれ早く決着をつけないと。
ブレイドユースは剣の力を何倍も引き出せる。そしてザンヤと私はすごく相性がいい。
だから今はこの子に頼るしかない!
守ってばかりではやがてジリ貧になる。
相手はどの距離でも戦えるけど、こっちは近寄らないと刃を届かせることができないんだから。
懐に入れば槍と杖は使えなくなる。
二つも選択肢が減るのだから前に出るしかない!
迎撃の槍を捌いて前へ。
一瞬で相手の懐に入り込む。
大きな的であるお腹をわざと大げさに狙う。
体の動きではかわしきれないと判断した化け物は盾で防ごうとする。
大きな盾だ。その判断は間違いじゃない。
姿勢を低くして盾の下に潜り込み、相手の視線から姿を隠す。
その位置に盾を構えてたら私の動きはわからないはず!
剣の切れ味にびっくりした。
抵抗なんて感じなかった。
スッと入ってスパッと抜けていた。
化け物はメイスを地面に叩きつける勢いで振り下ろす。
何も考えないで横っ飛び。
杖が並んでいる棚に突っ込む。
ゴォォォォ!
扉の前の空間に炎の壁が立ちはだかっていた。
あ、危なかったぁ。
あのまま突っ込んでたら真っ黒焦げになるところだった……設置型の方術まで仕込んでいるとか性格悪ぅい!
くんくん……あれ、なんか変なにおいが……。
どうしよう。ただでさえザンネンなのに前髪がこんなことになって……もう許さないんだから!
私が立ち上がると、五本腕の化け物は残った足でこちらへ向かってくる。