ex教師陣3

文字数 1,951文字

話は終わりましたか?
ええ。

もう二度とこんなことはしませんと言わせましたし、この件についてはもう大丈夫じゃないかしら

 王立学院のトップにいるカーモリア学院長に対してもケントールの言動は変わらない。

 そもそも二人の付き合いは長いので、いちいち話し方にケチをつけるようなことはしない。

 苦笑の一つも浮かべながら先ほどのセリフを反芻する。

 「言わせました」とはどういうことなのか。

どういったお話をしたのか伺っても?
普通のお話ですよ。なんの変哲もありません。

ただし、ちょっぴりボディタッチが多めだったかしら。うふふ

 だらしなくケントールの目尻が下がり、大きな口からはよだれが溢れ出ていた。

 なんとなく予想はつく。なにしろ長い付き合いだ。だからこれは聞かない方がいいのではないだろうかとカーモリアは思う。

 しかし教育者としての義務もある。聞いておくべきなのだろう。生徒たちを誤った道に進ませないためにも。

だってお尻のお肉をがっちり捕まえたら全身が硬直するんですもの。そうしたら穴に指を突っ込んでもいいのかしら?って思うじゃないですか。ええ、もちろんズボンははいたままですよ。だって他にもたくさんの人たちがいる場所でのことですから。でもあたしぐらいになるとズボンや下着の一枚や二枚は障害にならないの。狙いを定めたらズドンと一発、貫通させる自信はあるわけ。実際、貫いたんですけどね。その瞬間、それまでとはまた違う硬直でサイコーなの。頭からつま先まで一本の鉄棒でも差し込まれたみたいになってね。いやだわ、差し込んだのはあたしの指だけど。さすがに指はそんなに硬くないわよ

 聞くべきではなかった。

 あたら若い操を散らせてしまうとは――。


 これ以上突っ込んで痛い目を見る必要はない。

 知恵のある生物というものは事前に危機を察知したらそれを回避することができるのだ。

 これは回避しても許される類の案件である。間違いない。

自分以外は女の子で揃えるのは悪くないと思うのよ。だって誰でもハーレムは望むものでしょう? でも他者の足を引っ張るなんて言語道断。神が許してもあたしが許さない。もっとも女の子たちは仲がよかったんですけど男の子との関係がよくなかったみたいですけどね。打算も一つの関係性と言えばそうなんですけど、愛の伝道師としてはそれを許せないっていうか。あ、今の愛の伝道師っていうのは最近のマイブームなの。なんていうか、テーマってやつ? なんかもっと愛を広めていきたいなっていうか

 過去には『校舎裏の出会い茶屋』だの『放課後の恋人』だの『愛欲の布教者』だのいかがわしいテーマを掲げてきた。

 そのたびに他の教師陣はそろって頭を抱えていたのだが、学院長であるカーモリアの心痛を理解できた者が一人でもいただろうか。

 少なくとも目の前のコレはこれっぽっちも慮っていないわけだが。

とにかく無事に本人の手元に戻ったわけですし、よしとしておきましょう

 なにより対抗戦へ出場する一年生のチームも決まった。

 学院としてはこれ以上、何かをする必要はないだろう。

ところでケントール先生はどこまでやれると思いますか?
妊娠ぐらいならなんとか
……いえ、そういう話ではなく
愛があれば女同士でも妊娠できると思っているんですけど方術でなんとかなったりしないんですかね? 

ジンバルクに言えばやってくれないかしら

……話を進めてもいいですか?
もちろんよ。

対抗戦の話よね

 ばちこんとウィンク一つを決める。

 直撃したカーモリアはかなりきつい精神的ダメージを受けた。

今年は一年生が優勝するわ
おや、断言ですか。

そこまでの生徒たちなのですか?

 一年生の代表になったチームにはマルチユースが三人いる。

 そういう意味では楽しみではあるが、必ずしもマルチユースが強いとは限らない。様々な武具が扱えるが故に器用貧乏になり決定力に欠ける傾向もあるためだ。

サダーシュの攻撃力は別格ですもの。

あれを耐えるのはあたしでもム・リ

 ガードを担当しているケントールをしてその発言というのは学院長として看過することはできなかった。
そうですか。

それは楽しみですね

あの子、もしかしたらそうかもしれないわよ
……いよいよ、ですか
 カーモリアから表情が消える。
長かったですね。

そうですか、ようやく……

もっとも、間違いかもしれないわ。

あたしたち、同じミスを何度も繰り返しながらここまで来ているんだし、今回も間違っているかもしれない。

だからそんなに入れ込まない方がいいわよ。これは友人としての忠告

そうですね、素直に受け取っておくことにします
一応、鈴はつけてあるそうだから。

早ければ今晩にでも

わかりました。

今日は眠れそうにありませんね

眠ったら? 

お肌はとっくに曲がり角を通り過ぎているんだし

 ほほほほと笑う二人だった。
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登場人物紹介

サダーシュ=シュラインベース

本作の主人公。ブレイドユースなのだが愛用の使い古しの剣でしかその実力を発揮できないでいる。ただしその剣で戦う時は誰よりも強い。


イーサティア=ニアステリア

王都で困っていたサダーシュを助けてくれた女性。サダーシュと同じく学院に所属する。

ブレイド、ブロウ、スラスト、マジックの4つのユースを持つフォーユース。

トゥシス=アズウェイ

イーサと一緒にいた美男子。サダーシュに対してどこかトゲトゲしい感じがある。

ブロウとガードのダブルを持つ。

カーモリア=アナディール

王立学院の学院長。

ニシキーン=ネオビューズ

学院でブレイドの師範をしている。

央国五剣の一人。

ケントール=フィルマウス

学院でガードの師範をしている。

男子に対して特殊な趣味を持っているもよう。

ジュリウス=リベスパーン

学院でマジックの師範をしている。

方術具の制作者としても著名。

ゴウローン=フラマウンス

学院でブロウの師範をしている。隻眼。

シンゴラス=リースバリー

学院でスラストの師範をしている。

ジンバルク=アプキャッスル

サダーシュたちの担任でありマジックユース。

方術よりも古の神秘である魔法に傾倒している。

ハージェシカ=イーツテリア

学院生徒の一人。女性だがしゃべり方がそっけない。

ブレイドとブロウのダブルユース。

ハヤード=アンウィスト

学院生徒の一人。

スラストのユースで弓を得意とする。

ケインズ=サウスマウンズ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

マジックのユース。

ゲンザール=スプラウェル

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ガードのユース。かなり年配。

シンハース=ロンストア

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブレイドのユース。

ヘイステイシア=ウィスホール

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブロウのユース。


レフターナ=フィルパディ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

スラストのユース。

汎用男性1

汎用男性2

汎用男性3

汎用女性1


汎用女性2

汎用女性3

モンスター

描写に合わせて適宜ご想像ください。

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