ex教師陣3
文字数 1,951文字
王立学院のトップにいるカーモリア学院長に対してもケントールの言動は変わらない。
そもそも二人の付き合いは長いので、いちいち話し方にケチをつけるようなことはしない。
苦笑の一つも浮かべながら先ほどのセリフを反芻する。
「言わせました」とはどういうことなのか。
だらしなくケントールの目尻が下がり、大きな口からはよだれが溢れ出ていた。
なんとなく予想はつく。なにしろ長い付き合いだ。だからこれは聞かない方がいいのではないだろうかとカーモリアは思う。
しかし教育者としての義務もある。聞いておくべきなのだろう。生徒たちを誤った道に進ませないためにも。
聞くべきではなかった。
あたら若い操を散らせてしまうとは――。
これ以上突っ込んで痛い目を見る必要はない。
知恵のある生物というものは事前に危機を察知したらそれを回避することができるのだ。
これは回避しても許される類の案件である。間違いない。
過去には『校舎裏の出会い茶屋』だの『放課後の恋人』だの『愛欲の布教者』だのいかがわしいテーマを掲げてきた。
そのたびに他の教師陣はそろって頭を抱えていたのだが、学院長であるカーモリアの心痛を理解できた者が一人でもいただろうか。
少なくとも目の前のコレはこれっぽっちも慮っていないわけだが。
なにより対抗戦へ出場する一年生のチームも決まった。
学院としてはこれ以上、何かをする必要はないだろう。
ばちこんとウィンク一つを決める。
直撃したカーモリアはかなりきつい精神的ダメージを受けた。
一年生の代表になったチームにはマルチユースが三人いる。
そういう意味では楽しみではあるが、必ずしもマルチユースが強いとは限らない。様々な武具が扱えるが故に器用貧乏になり決定力に欠ける傾向もあるためだ。