十一(四)
文字数 1,297文字
やがて軟舞は胡旋舞に替わり、それを待っていたかのように、胡服を着た男が、剣を振りかざして舞姫に迫る。放り投げた
踊り終わって歓声にこたえる二人に近づこうと、リョウはみんなを置いたまま、走り出した。しかし、群衆の中で思うように進めない。そのとき、強い力で服をつかまれ、足払いで後ろに引き倒された。リョウの周りを祭りの仮面をかぶった男たち数人が囲んでいた。
「こっちに来い」
両腕をつかまれ、引きずられるように横の路地の暗がりに連れて行かれた。同じ茶色の頭巾を被った男たちは、路地の奥と手前を
「『青海邸』の
「だとしたら何だ」
いきなり一番大きな男が懐から短刀を抜き出し、有無を言わさずリョウに突っかかってきた。とっさに後ろに飛びのいたリョウだが、そこに居た男からドンと押されて真ん中に戻された。今度は、周りの男たちも、次々と短刀を
リョウは飛びかかってきた男の短刀を避け、その手を両手で掴みながらくるりと回って背中と肩で男の鼻っ柱に当て身を食らわせた。そのまま横に走り、店の軒先に掲げられた釣り提灯の竿に飛びつくと、提灯が落ち、ろうそくの火が
「しゃらくせい、一度にかかるんだ!」
頭の声に男たちがさらに間を詰めてくるのを見て、リョウは自分の方から先頭の男に向かって走り、振り上げた竹竿でその額を叩き割った。そのまま間髪入れずに左右の男の手首を打って短刀を叩き落とした。多勢に無勢では、一か所に留まることは死を意味する。戦場で鍛えられた本能が無意識にリョウの身体を動かし、リョウは右に、左に飛び、短刀を避けながら、次々と敵に竹竿を振るった。
「誰だあ!」
大通りから数人が走りこんでくるのが見えた。リョウを襲っていた一団は、それを見て路地の奥に逃げ去った。一息ついたリョウが見た竹竿の先は、ブサブサに割れていた。駆けつけてきたのは、タンと進、それに龍溱だった。
「突然、走り出したと思ったら、群衆の中に消えたので、探していた」
タンがホッとした顔を見せた。