オタクが野菜に目覚めた場合ー2012年の冬、オタク青年は地方に移住を  楠木斉雄

文字数 885文字

ラストの展開ににやけ笑い!

 

 面白く最後まで読ませていただきました。

 実は、私は過去に(農業に従事されている方からしたら大変失礼な言い回しになりますが)ふとしたことで魔が差して就農を考えたことがあり、農業への転職を専門(?)にした斡旋サイトにも名前を登録しましたし、そこが主催した就農フェアにも何度か足を運んだことがありました。

 結局は、(割と本人としてはその当時は本気だったのですが)その後すぐに自分を取り巻く環境ががらりと変わってそれに翻弄されているうちにズルズル・・・と今のオフィスワークを続けているような次第で面目ないのですが、あの当時調べたり見聞きしたりした就農に向けた支援制度なんかは、この作品を読みながら「ああ、そういえばこんな感じのがあったな」と懐かしく思い出します。同時にこの作品からは、就農することに対する飾らない現実が確かに描かれていると感じました。

 

 小説の構造としても、追い詰められていて後のない主人公が、ひょんなきっかけから農業という活路を見出し、失恋?(考えてみれば茜さんのことを入れると2回目の失恋なんですね・・・笑)を経つつも次の恋に対して勇気を出して、無事にハッピーエンドを迎えるという、良い感じのストーリー展開でほっこりでした。主人公のノホホン(いや、そう言ったら怒られそうですが)とした性格も好きですし、登場する人たちがみんなみんな農業のことを真剣に考えている姿が素敵でした。

 お酒の勢いを借りてのプロポーズは「マジで?!」と笑ってしまいましたが、こういう時のお酒の力は案外、偉大なのは私も知っています(笑)

 

 福島の原発事故の風評被害、差別のネタなども嫌味にならない程度に話に絡んでいて、色々と考えさせられることが多かったです。

 素敵なお話をありがとうございました。

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