3インチ  多口はじめ

文字数 2,361文字

日本人留学生「大和(ヤマト)」は、カリフォルニアの片田舎で一人寂しく大晦日を迎えようとしていた。

そんな大和はアメリカで数少ない友人「クリス」に年越しホームパーティへと誘われ、しぶしぶ、内心楽しみに感じつつ、パーティに参加。


そこで出会った可愛い「エマ」、変だけど物知りな「ロラン」と共に楽しく過ごしていたその時、


・・・・・・ブツンッ——


大和の意識が途切れる。


(「裏サンデー」より)

https://urasunday.com/title/561

そして目が覚めたら、パーティーに参加していた友人たちが巨大な猫に食われているところだったとさ。
最悪。猫、最悪。
……なんかそれ、ぼくが悪く言われているような気がしてとてもイヤ。
……実際、猫ってあそこまでなんでもかんでも噛み殺してしてしまうものかな?
まあ、チョロチョロと動くものを捕まえたくなるのがぼくらの(さが)だけど……(笑)
ちょっとね、あの描写はやりすぎって気はしなくもない。
でも、ぼくら猫よりヤバかったのは虫じゃない?
いやあ……。あれはロランの知識がなかったら早々に全滅だったはず。
そういえば、周りが巨大化したわけじゃなくて、自分たちが縮んだということに気付くのはどこだった?
猫や虫から逃げ回って、ロランに合流してからではなかったかな。
あ。そっか。連載が続くと、そういうところをつい忘れがちになって、よくないねえ。(えへへへ)
? 忘れてしまったのは連載が長かったせいなの?
何か言った?
……いや。
ともあれ、ロランと合流する際にヤマトがとんでもない大ジャンプをしたのがぼくには印象的だった。
本来の人間のキャパを超えたジャンプ。体が縮めばそのくらいは誰もができるっぽい感じだったけど、むしろその後、その設定が活かされてる感じがなかったことにぼくはツッコミいれたいね。

…………。(そう言われてみると!)

あと、微妙にヤマトだけがハイスペックでズルかったよね?
それも活かされていたのは初期だけで、中盤からは埋没した気がするのはぼくだけなのか。
そんなことは、あったっけ? 最後までヤマトは剣士だったよ?
うん。徹頭徹尾、剣士だった(笑)
そしてラストは宿敵カマキリとの一騎打ち。勝負!
って書くと語弊があるよ!(汗
まあ、そうなんだけどさ。ラストのラストでついに出てきたか、昆虫界のラスボス! って感じでねえ。読んでてこの話、最期までヒリヒリだった。
なんだかんだとずっとピンチだったしね。
序盤の猫と虫。そして屋外に出てからの……人間。
人間の子供は、あれはマジでヤバい。
あんのくっそガキ……(笑) 何度、紙面に飛び込んでぶん殴ってやりたいと思ったか。
あの我儘さ、残酷さ、可愛げのなさ。どこをとっても「嫌い」しかない。でも、そこが人間の子供っぽさかもと思う。
人間の子供との前後関係は忘れてしまったが、排水溝で出くわした大量のネズミとゴキブリも印象に強く残っているよ。
あそこで圭さんは一回悲鳴を上げてたね。
虫そのものがそれほど得意じゃなし、ゴキブリなんて断固ムリだから! 生理的に、無理だから!
……そう? ぼくら猫的には、あのゴキブリのチョコマカ動く感じがたまんないんだけど?
ふぇええ! 不潔! 猫、不潔!
ちょっと!
……他に出てきた危険生物って何があったっけ?
鳥と、蝙蝠かな?
でもやっぱり、一番の危険生物は人間ということになるんだろうな。

こういうピンチな状況下においても、強き者、虐げられる者という権力の構図は生き続けていたしね。

それは子供から逃げ切った後に出会ったチビ人間たちのエピソードだね。なんだか、あの最期は哀れでもあったけど。
そういえば、あのシーンで「裏切り者」の存在が匂わされるんだっけ?
一番あってほしくない、展開だった、あれは。でも、消去法的にも彼しかいないと思っていたよ。
まあそれはともあれ、あの段階で相当数の行方不明者が過去に出ているわけだから、警察やマスコミが騒いでないのもオカシイって思ってしまった。
(そこ、あんまりツッコむとストーリーが破綻するって! 正直クローンが死んだら本体が死ぬ設定だってツッコミ入れたいもん! スマホがあの状態で落ちてたこととかさ!)
死体の処理、どうしていたと思う?
なんとなく研究所の中で冷凍保存されてそう。下手に捨てたらバレそうだし。
ああ、確かにね。
そんなこんなで最後は無事に元の大きさに戻れるヤマトたちなんだけど、最終回についてはこれでよかったような、悪かったようなな気持ちで実はすっきりしていない。
やっぱり、クリスは死ぬべきだった?
日本でいうところの三途の川的な場所を渡ったくさいあの描写で、果たして彼の蘇りがあるのかどうか。でも、ヤマトの奮闘をあそこまで描いたからには蘇ってほしい気持ちもあって複雑なんだ。
そうだね。あれでクリスが完璧に死んでしまったら、ヤマトの最後の頑張りが無駄になってしまう。
でも、クリス本人について思うなら、あのまま死んだ方が彼のためな気もするんだよ?
うーん。彼にとってはこの世は生きづらいよね。たぶん、二人で無事にあのピンチを乗り切ったとしても、その後のことを考えるとヤマト一人に彼は背負いきれなかったと思う。
人間の「心」って難しいな。
最近でも、この手の精神構造を持った人間を描くのブームじゃない?
夏目漱石が「自己の心を捕えんと欲する人々に、人間の心を捕え得たるこの……」なーんて言ったのも、今やすっかり古臭くなってしまった。
いや、あれはあれで、普遍的な人間の心理を描いてはあると思うんだよ? でも、最近はいわゆる学問的な「型」に当てはまらない精神構造の人間に多くスポットが当たっているわけで……。
そのうち、人の心理を「型」に嵌めること自体がナンセンスになるかもね。
ああ、ありそう。……いや、ないでしょ。
ないのかい(笑)
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