魔斬りの家光 十九島信
文字数 1,675文字
悪斬る!魔斬る!江戸を斬る!!
時は寛永、江戸の世に…人呼んで”あばずれん坊将軍”見参!
「音頃さん」作者が描く異端時代劇、開幕!!
(「裏サンデー」より引用)
スティグマ(ギリシア語)は、もともとは牛や奴隷に焼きつけられた刻印のことを指すそうだ。
詳しくは調べてもらえばいいとして、広く「差別、偏見」の意味をもっているのがその言葉だね。
でも、この漫画ではキリスト教の「聖痕(スティグマータ:ラテン語)」のことを指しているんだろう。
うん。釘を打たれた両手足、十字を背負った背中、茨の冠をかぶった額、あたりに出るのが多いらしい。
まあ確かに、この漫画の使い方だと水戸のご隠居がお付きのものに持たせているアレに近い、のかも。ははー!(土下座) とはならないけど、葵の御紋を見れば結果的に悪魔が正体を現すわけで。
その発想には恐れ入った。話を信長に繋げるあたりが巧いと思う。
でも、詳しいことを調べれば調べるほどに、信長を悪魔に結びつけたのはニュアンスでしかないとわかっちゃうんだけどな?(笑)
そんな信長はキリスト教には改宗しなかったし、家康も当初はキリスト教に寛容だった。保護するも、容認するも、弾圧するも、単に政治的な理由でしかない。
果たして政治が宗教を利用しているのか、宗教が政治を動かすのか。
今はアフガン情勢が熱いわなあ……。
それを言い出すと、ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も神様は同じなんだけど?
うーんそれはどうかなあ。我らの神はあまりの高みにおわすゆえに、下界の人間たちが相争っている姿は何一つ見えない、と、言う人もいるからね。
ミクロで紛争が絶えずとも、マクロ的にはこの世は平和そのもの、ってことだよ。
納得いかないことが多いのがこの世の中だよね……。
うわあ、久しぶりに脱線したね。
そんなわけで本作は、江戸の街にあふれる悪魔 を三代将軍とその弟・幸松が力を合わせて退治する物語。
……のわりに、兄の家光からめっちゃ大事にされたのがこの幸松という男。
想像するに家光は忠長との仲が拗れてたから、異母弟とはいえ幸松のことが光り輝いて見えたんじゃないのかな。
実際、保科正之は相当な賢君だったらしいし、弁えるところ弁えて家光の機嫌を損ねるような真似はしなかったんだよ、きっと。
漫画の方では白い書を持つ家光と、黒い書を持つ忠長という構図になっていて、その点も興味深い。欲を言うならもっと掘り下げて、とは思うものの。
信長を出してからのあの呆気なさはぼくもアカンと思うんだけど、前に読んだ『放課後の異端者 』がやはり同様の終わり方をしたので、これはこの作者の特徴なんだな、と思うことにした。
最近そういうの流行ってきたの? 『1000円ヒーロー』の作者も原作者で連載始めたんだけど。