お縫い子テルミー  栗田有起

文字数 2,065文字

恋は自由を奪う…でも、素晴らしい。

住み込みで服を仕立てる流しのお縫い子・テルミーが恋に落ちてしまった。女装の歌手シナイちゃんのため、一針入魂、最高のドレスを作り上げる。切なくもまっすぐな、叶わぬ恋の物語。


(集英社HPより引用)

https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=4-08-746050-9

短編集は短編集でいいけど、短編集だとわかるようにしておいてほしいと思わない?

この後で出版された文庫版がどうなったかはわからないけど、こっちのは読んでて「!」だった。

せめて目次くらい作ってくれたらいいのに。

文庫版は解説がついているみたいだよね。

解説、すごく気になる。

どうして出版社は、解説を文庫版にしか添えないのだろうか。

謎だよねえ。最初から後書き的に入れておいてくれた方が絶対読者に優しいのに。

そもそもハードカバーで買う人間というのは、まっさきにその本を手に取る人間なんだしね。

マーケティングの世界ではこういう人たちをアーリーユーザーって言うらしいよ。

真っ先に新サービスに食いつく変態ユーザでしょ?

変態……(笑)

その結果、多少冷遇されても痛い目に遭っても泣かない人たち?

実際、サプライヤーは次に追随するユーザーこそ大事にするらしいから。そこでウケるとさらに後続のユーザーたちに間違いなく波及するとかで。

じゃ、ハードカバーに解説がつかないのも、そういうことだ?

あ!

という前置きはともあれ。

今回手に取った『お縫い子テルミー』には2つの作品が収録されていたよ。

表題作の『お縫い子テルミー』と、『ABARE・DAICO』。

それも、ページ数からすると圧倒的に『ABARE・DAICO』のボリュームが多かったという。

もういっそ表題も『ABARE・DAICO』にしたらいいのにね(笑)
そこには何か大人の事情があるようには思うけど、どちらにせよ2つともじんわりと心に効いてくるハートフルな話だった。

『お縫い子テルミー』は、テルミーのサバっとしたところがとても良い。

恋をしたから、逃げなきゃいけない。

その論理展開がとても不思議だけど、読んでみるとそういうことかと言葉にできないまでも心で納得してしまう。そんな感じ。

テーマは「自由」だったのかな?
そうかもしれない。その「自由」の定義が序盤でポンと読者の前に展開されるわけだけど、それもやっぱり、なるほどね、と頭より先に心が納得してしまう。
テルミーが作った一針入魂の服が気になるよ!
運命を切り開く奇跡の服って感じだもんね。ぼくも一着作ってもらいたいなと思った。
さて、2作目の『ABARE・DAICO』は……。
何が『ABARE・DAICO』なんだかさっぱりわからないまま読んでて、なんでさとやっぱりわからないまま『ABARE・DAICO』のくだりに差し掛かり、まあいっか、と、読み終えた。
これも頭で理解するより先に心で響かせろだねえ。

子供心の「負けたくない」という気持ちにはくすぐったいものがあったよ。

「負けてるのわかってるからこそ、すごいって言わせたい」って、そういう気持ちになったことはぼくだって一度や二度じゃない。

まあ、圭さんは優等生でいなきゃいけなかった劣等生だから。

言うな!

それはともあれ、「死」への恐れな話を最近読んでなかった?
『夏へのトンネル、さよならの出口 群青』だね。原作は読んでいないけど、漫画の連載は毎週楽しみにしている。で、先日ちょうどそんなシーンがあった。

特別でなければと、平凡の何が悪いのか。

あれはこっから先、どう話が展開していくのか読めないねえ。

こっちの作品の「死」への向き合い方についてはぐるりと回って収まるところに収まった感じ?

そして、ラストのどうしてそうなるのかよくわらない唐突な「うんこ」ネタ(笑)
いや、子供は「うんこ」好きだから!

にしてもねえ(笑)

「なんだそりゃ」とツッコミ入れつつニヤニヤと笑ってしまったよ。

え? でも、この作品の見どころはまさか「うんこ」じゃないよね?
「うんこ」も十分見どころだけど(笑)

あれだろうね。主人公が母親に向かって言い放つところ。

うん! よくぞ言ったって思った!

ぼくらってさ、「決める」ことに臆病なんだよね。

だから、「どう思う?」と他人の意見を求めて他人の意見に流されて、そしてその結果の責任を他人になすり付けようとする。

自らは何も行動しなかったのに、誰かの行動が失敗に終わったときに「ほれ見たことか」と非難する人たちも似たような感じだよね?

責任は負いたくないのに、自分の思う通りに世の中が動いていて欲しいんだよ。我儘だよね。

日本人の「美徳」といわれているそれなんて、本当に今の日本人にあるか疑わしい。結局は全部が神話の世界の話なのかもしれない。

きっと今や、そういう人たちでこの世の中は溢れかえっているわけだ。

おっと、なんだか身も蓋もない話になってきた。
ははは。だからこそ、ぼくらは『ABARE・DAICO』のような話を読むと心がくすぐったくなるんじゃないの?

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