デトロイト・メタル・シティ 若杉公徳
文字数 1,116文字
インディーズ界最凶のデスメタルバンド、その中身は……?
あれを読んだ時も思うところあったんだけど、今回の『デトロイト・メタル・シティ』で確信した。
主人公に同情の余地はない。一切、ない。
かたや来たるべき終末に向けて戦士となるべく修行に明け暮れたのに、蓋を開けたら終末が来なくて解散を命じられ、右も左もわからない現代社会に放り出された主人公・勝平。
かたや本音ではポップな音楽で売れたいのに、どうしようもなくとんでもない言動を繰り返すデスメタルバンドでインディーズ界の人気を席巻し、いやいやながらそれを続けている主人公・根岸。
境遇だけを文字にしたらそりゃ確かに、彼らはどちらも可哀そうな境遇なんだけど、結果的にどっちの主人公にも哀れさが滲まないのは実際どっちもゲスだからなのか。
勝平はちゃっかりしてるし、根岸の場合は本性がそっちじゃん?
そういうところを巧い匙加減で描いているから、この漫画は四の五の考えずにニヤニヤ笑っていられるのかな、と思う。
そうそう。実際戦闘シーンがあるかといったら、ほぼ無いんだよねえ……(笑)。ポーズだけ取って終わらせる、その寸止め感が『KAPPEI』の場合は好き。
あと、守が毎度カワイソウ(笑)
でも、守はほら、アレだから。
それ考えると、『デトロイト・メタル・シティ』には寸止めはないよね。やりきってる。
根岸は本当にどうしようもない主人公なのだけど、しかしそんな彼を悪魔に豹変させるアルアルはわかりみが深くて苦笑しかない。
あれは最大の謎。
しかし、称賛されていることに気付けないのも根岸の良さ。
そこは許しがたいよね。許しがたい。
しかしどうせこのまま永遠にすれ違い続けるんだろうから、許さなくもない。
なんにしても『デトロイト・メタル・シティ』はスッキリ終わって満足。
ギャグマンガには一定のリズムを維持したまま、「あれ? これで終わり?」になるケースも多いからさ。
しっかりキメてきたよね。
やはりデスメタル界にはクラウザーが必要なんだって、な。