おかしき世界の境界線  村田椰融

文字数 1,898文字

私と違う世界を見ている、友達。

美涼は淡泊な家庭の教育ゆえに感情の起伏が乏しく、友達がいなかった。
千鶴もまた【人ならざる世界の住人】を見ることができる力のせいで気味悪がられ、友達と呼べる人はいなかった。
二人は友達になり、仲を深め、お互いの住んでいる世界を知ることで親しくなっていくが、やがて踏み込んではいけない領域まで達してしまう。
住んでいる世界が次第に二人を引き離そうとする。でも、友達でいたいという思春期のわがまま……

絶対に相容れない境界線。どこまで踏み込めるのが友達なのか?親しくなることで自問自答を繰り返していく葛藤――

『妻、小学生になる。』の作者・村田 椰融(むらた やゆう)が新たに描く、女子高生二人の和風友情奇譚、開幕。


(「裏サンデー」より)

https://urasunday.com/title/1152/157155

ベースにしているものは「黄泉の世界」だけど、テーマは青春。
??

そんな意味深な言い方をすると創作をなりわいにしているすべての作家がむっとなると、思うけど……?

いや、漫画そのものはすっごく面白かった。それは前置きとして述べておかないと確かに誤解を与えてしまうよね(汗
? 君、何がいいたいんだ?
いやあ、この作品を「どんな漫画か」と説明しようとすると、難しいなあと思ってねえ。
……友情を描く青春物語では、だめなのかい?
でも、現実世界と黄泉の世界の間を揺蕩うわけじゃない? 千鶴の能力を前にいろんな大人たちの思惑も絡んでくるわけで……。
おう、またジャンル分けの話になるのか、これ。
その作品がどのジャンルに属するかって、永遠の課題だと思うんだよね。
まあ、どこに割り振ろうが、ひとつ確かなこともある。
ん?
人間を描かない作品は、ない。
いや、それもどうかな? ロボットしか描かないSF作品だってあってしかるべき。
それは、「人間」に対する「人間のいない世界」と、考えることもできるよね?
茶虎の子猫とパグしか出てこない作品だって、過去にはあったじゃない?
『子猫物語』……チャトランか! 懐かしすぎるなおい。ここを仮に読んでくれる人がいたとしても通じないぞ絶対。
ああ、ぼくらも本当に歳を取ったよねえ。
何を言ってるんだ、君。『バルカロール』の中では永遠の1歳猫のくせに。
2歳くらいにはなれたんじゃなかったっけ?
まあ、そのくらいにはなったか? どっちにしたって、『子猫物語』からだって人間の視線を外すことはできないじゃないか。「人間」が創作している以上は、物語から「人間性」を排除することはできないんだよ。
結局、すべての物語は「人間」を描くのか。
まあ、人の心の「機微」を描くか、人間によって起こされた「事実」だけを淡々と描くのか、という大きな分岐はあるようには思うけど……。
何か、思い当たることが?
先日たまたま手に取った某小説が時代小説だったんだが、まあ、時代小説の場合は後者の手法を取りがちだな、と、思いつつ、その作品は近年稀にみる駄作でね。久しぶりに途中で読むのを放棄した。
……ああ、歴史小説って、下手が書くとそういうのに陥りがちだよね。
歴史小説が小説となれるか、ただの論文に留まってしまうかは紙一重だと思う。
なるほどねえ。
ま、そこはともあれ、ストーリーのある作品では人を描くしかなく、人の何を描くかは主人公の置かれた境遇次第、というところはあるのかなとは、思う。
主人公がティーンで、その周囲が学校関係者なら、やはり描かれるのは青春ということになるんだな。
わかりやすく、これは「友情」を描いた漫画だったよね。
タイトルの「境界線」は、この世とあの世の境という意味だけじゃなくて、人と人との間のことも意味しているんだよね。
作中、何度もぐっとくる金言があった。人と人の間の踏み込んではいけない領域、遠慮しすぎてもいけないってこと、そして友達の関係の意義。
金言はもちろん美涼も全力でぶちかましにきてくれるんだけど、特に終盤になってからのワタルがカッコよすぎた。
あれはマジで痺れたわ。なのに扱いが雑なのが可哀想でならん(笑)
鬼ちゃん、どうなっちゃたんだろう……。
あちらの世界の「生死」の概念がよくわからないけど、無事でいてくれると嬉しい。
あんなにボロボロになってワタルを守って……それで「好き」って思いを伝えてくるの。あの瞬間に感極まって思わず泣いちゃったよ。
すべてが終わって、望み通り千鶴は普通の女の子になったわけだけど、そして物語としてはこれがあるべき姿なのだと思うのだけど、それでも結果、「見えなくなってしまった」のはちょっと寂しいね。
大丈夫。見えぬけれどもあるんだよ!
金子みすゞかいな(笑)
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