無花果の森 小池真理子
文字数 1,588文字
夫の暴力から逃れ失踪した女が、身を潜めた地方都市の片隅で生き抜く姿を静謐な文体で描ききり、現在に生きる人が抱え持つ心の闇に迫った力作長編! 絶望と希望、生と死の境界に怜悧に斬り込んだ著者の新境地!
(日本経済新聞出版)
前にも話したかもしれないけど、読者の好き嫌い・面白いと感じたか否かは作品の質や価値とは別の次元にあるんだって。
つまらんと感じたとしても、じゃあこの作品を自分が書けるかと問われたら「書けない」と認めざるを得ないわけだしね。
この作品でポイントが高いところは八重子とサクラだよ。この2人がいなかったら、これ本当につまらない作品としか言えなくなる。
八重子の意地の悪さも、意地っ張りも、こういう生き方をしてきた人間ならこんなものかなというレベル。むしろ、根のところでお人好しだし好感度が高い。
人生の大先輩として、なんら恥じるところのない生き様を晒して死んでいったと思う。
驚くほどお人好しなところも好きだなあ。自分のことをバケモノって言ってるけど、むしろ立派に生きているよねと思うもん。
こういう人間がいるから、この世の中まだ捨てたもんじゃないんだねって思えるような人物だよ。
それに、八重子とサクラの二人はいいコンビだった。
結局あなた、場に流されているだけじゃないの……と。
ぼくは、くよくよしているくよ子は嫌いなんだ。程度ってもんがあるだろが、と。
男も男でさ。はめられたシーンなんかも含めてそんな馬鹿なと、思ってしまってね。
二人でサクラのことを笑うシーンなんかも何がそんなにおかしいのかちっともわからなかった。正直、「何様?」と思ってしまった。人のこと笑える立場なのか、と。
物語は最終的に綺麗にまとまったけど、もしやただの吊り橋効果なんじゃないのなこの恋愛は、ゆくゆくは破綻するんだと思うよ。