シグナル100  原作/宮月新 作画/近藤しぐれ

文字数 1,844文字

歩く、食べる、笑う、泣く。そんな、当たり前の「自由」が「死」につながる…100の「自殺暗示催眠」を掛けられた高校生たちの、絶望デスゲームが始まる!!!!


(「マンガPark」より)

https://manga-park.com/title/18337

読み始めてしまうとどうしてもラストが気になるから(それも作者の戦略であろうしまんまとそれに嵌ってしまった、わけで、)なんだかんだと最後まで読むしかなかったのだけど、読み終えて思うに……読まなければ、よかった。
え? そんなにつまらなかったの?
いいや、面白かったんだよ。
じゃ、なんでそんな感想に至るわけ?
……これもう、どこからどうツッコめばいいのかさえわかんないんだけど、総じて……設定に無理がある気がしてならず。
特定の条件に到達したら自殺してしまう催眠術、だっけ?
自殺催眠と言えば、『魔術はささやく』が面白いよね。
あの頃は宮部作品をよく読んでたね、圭さん。
大学卒業するまでは宮部作品はコンプリートだったはずだよ。社会人になってからは夢のブラック勤務で、そもそも本を読むどころじゃなかったからね。
読書の習慣が戻ってきたのもここ数年だしねえ。
当時は1日3冊くらい読んでいたけど、今では1週間で1冊が限界。それさえ読めないこともある。格段にペースが落ちたことを考えると、中学・高校・大学……時間も体力もがあり余っていたんだなと今更ながらに感じるよ。
それでもぼちぼち本を読む習慣を取り戻したのに、それでも頑なに宮部作品を読んでいない気も、するんだけど?
いや。読んだは読んだんだよ。どっちが先だったかは忘れてしまったけど、『ブレイブ・ストーリー』と『孤宿の人』で、結果的に心が折れてしまってね。
……どういうこと?
どっちもね、ぼくが好きな登場人物が死んでしまうんだけど、その死に方があまりに理不尽すぎて。
ああ、宮部作品、確かにそういう残酷なところがあるよね。カッコよかったり、イキなキャラクターほどよく殺す。
考えてみればいの一番に読んだ『龍は眠る』でもNo.1なキャラクターが思わぬ形で死んでしまうんだが、あれだってよくよく考えてみると理不尽そのものだったと思う。

でも、学生の頃はそこで絶叫しても心は折れなんだ。それはまだ、ぼくの心が子供だったからなのかもしれない。

今は、くたびれたってこと?
創作の世界くらい、夢を見たい。しんどいのは現実だけで充分じゃないか。
くたびれてるねえ(笑)
体が今やハッピーエンドしか受け付けないんだよ、なんだか。辛い話ならせめて気付きや救い、勇気を与えて欲しい。
なるほど、そこからの、『シグナル100』。
これほんと、まったくなんにも無い。読んで残ったものは後味の悪さだけという、その見事さ。
結果だけを見ると、生徒、全滅だからね……。
唯一生き残った主人公が、ラストで「今ならあの時の下部先生の気持ちがわかる」的な発言をするんだけど、ほんと、ごめん。この部分がまったくもって共感できなくて。

ここが共感できないってことは、序盤の展開だって共感できていないってことになるので。

しかし、生徒への追い打ちのかけかたはすごかったよね。何が何でも殺してやろうという執念感じた。
それでいて救済措置としての隠れ解催眠ワードが用意してあったとか、なんなんだ?

あの状況に陥って、生徒の口からそのキーワードが飛び出すと思うか?

悔恨の気持ちなんて、仮にあったとしても瞬間的に吹き飛んだと思うんだよ。こんなぶっ壊れたゲームに生徒を巻き込んだなら、せめてフェアであってくれ。

でも、フェアであったら答えに行きつく生徒も出てきてしまうのでは? そしたら物語が破綻する。
うん。そんなこんなで、結論ありきで進むこの漫画は、作為的な予定どおり感があるんだよ。内容とはうらはらにお行儀がとてもいい。
お行儀か……。
パターン化された生徒や教師の行動も含めて、ね。「恐怖」はあるが、「迷い」がない。だからこそ、嘘くさい。
嘘くさいっていえば、特に終盤で幻覚との会話が成り立っているのは、さすがに嘘くさいってぼくも思った。
あそこ、一方的に相手が喋るだけならまだしもさあ。あと、催眠が解けていたのに、幻覚が見えるとかも、ないだろ、って、思ってる。
仮に隠れ解催眠ワードを早々に当てても、これだと確かにわかんないまま一夜を過ごす羽目になるんだ、あれ。
だからこそ、ラストが一番もやっとしているんだよ。もう少し巧い辻褄の合わせ方があったんじゃないか?
でも、作品は面白かったんだよね?
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