シグナル100 原作/宮月新 作画/近藤しぐれ
文字数 1,844文字
歩く、食べる、笑う、泣く。そんな、当たり前の「自由」が「死」につながる…100の「自殺暗示催眠」を掛けられた高校生たちの、絶望デスゲームが始まる!!!!
(「マンガPark」より)
読み始めてしまうとどうしてもラストが気になるから(それも作者の戦略であろうしまんまとそれに嵌ってしまった、わけで、)なんだかんだと最後まで読むしかなかったのだけど、読み終えて思うに……読まなければ、よかった。
いいや、面白かったんだよ。
……これもう、どこからどうツッコめばいいのかさえわかんないんだけど、総じて……設定に無理がある気がしてならず。
自殺催眠と言えば、『魔術はささやく』が面白いよね。
大学卒業するまでは宮部作品はコンプリートだったはずだよ。社会人になってからは夢のブラック勤務で、そもそも本を読むどころじゃなかったからね。
当時は1日3冊くらい読んでいたけど、今では1週間で1冊が限界。それさえ読めないこともある。格段にペースが落ちたことを考えると、中学・高校・大学……時間も体力もがあり余っていたんだなと今更ながらに感じるよ。
いや。読んだは読んだんだよ。どっちが先だったかは忘れてしまったけど、『ブレイブ・ストーリー』と『孤宿の人』で、結果的に心が折れてしまってね。
どっちもね、ぼくが好きな登場人物が死んでしまうんだけど、その死に方があまりに理不尽すぎて。
考えてみればいの一番に読んだ『龍は眠る』でもNo.1なキャラクターが思わぬ形で死んでしまうんだが、あれだってよくよく考えてみると理不尽そのものだったと思う。
でも、学生の頃はそこで絶叫しても心は折れなんだ。それはまだ、ぼくの心が子供だったからなのかもしれない。
創作の世界くらい、夢を見たい。しんどいのは現実だけで充分じゃないか。
体が今やハッピーエンドしか受け付けないんだよ、なんだか。辛い話ならせめて気付きや救い、勇気を与えて欲しい。
これほんと、まったくなんにも無い。読んで残ったものは後味の悪さだけという、その見事さ。
唯一生き残った主人公が、ラストで「今ならあの時の下部先生の気持ちがわかる」的な発言をするんだけど、ほんと、ごめん。この部分がまったくもって共感できなくて。
ここが共感できないってことは、序盤の展開だって共感できていないってことになるので。
それでいて救済措置としての隠れ解催眠ワードが用意してあったとか、なんなんだ?
あの状況に陥って、生徒の口からそのキーワードが飛び出すと思うか?
悔恨の気持ちなんて、仮にあったとしても瞬間的に吹き飛んだと思うんだよ。こんなぶっ壊れたゲームに生徒を巻き込んだなら、せめてフェアであってくれ。
うん。そんなこんなで、結論ありきで進むこの漫画は、作為的な予定どおり感があるんだよ。内容とはうらはらにお行儀がとてもいい。
パターン化された生徒や教師の行動も含めて、ね。「恐怖」はあるが、「迷い」がない。だからこそ、嘘くさい。
あそこ、一方的に相手が喋るだけならまだしもさあ。あと、催眠が解けていたのに、幻覚が見えるとかも、ないだろ、って、思ってる。
だからこそ、ラストが一番もやっとしているんだよ。もう少し巧い辻褄の合わせ方があったんじゃないか?
面白かった!