放課後のグランギニョル~チャイムが鳴る時、少女の微笑みは肉塊に変わる  天海杏菜

文字数 1,684文字

乙女たちが集う清き学びの園が、血と肉片にまみれた惨劇の舞台となる!!
絶海の孤島に設けられた名門女子高「聖メイデア学園」。
希望を胸に入学してきた主人公・立華ゆいは、突然理不尽なデスゲームに巻き込まれてしまう!!
放課後のチャイムが鳴る時、少女たちの微笑みは無残な肉塊と化し、無限に続く殺戮の劇場の幕が上がる…!!


(「裏サンデー」より)

https://urasunday.com/title/1547

ぼくはね、圭さんが前回ツッコミを入れていた『シグナル100』よりも、こっちの作品の方にこそツッコむ要素が多かったと思うんだよ。
……これは、最初の数ページを読んだ時に『殺戮地獄の乙女たち』っぽいな、って、思った作品だね。
『殺戮地獄の乙女たち』?
高校だったか中学校だったかは忘れてしまったんだけど、同じ学校に通う少女同士が授業の一環で殺し合う話なんだ。
ああ、そういえば、そんな話だった。……殺し合っても、まあ、基本的には死なないんだけど。
そのあたりのカラクリはネタバレになるし、毎度毎度脱線しているとそろそろ怒られるから割愛するとして……
? 誰に? 怒られるの?
こ、ここここ、こっちの……都合だよ……(震え声
…………。
コホン。ともあれ、“放課後”が始まった瞬間に殺し合いが始まる『放課後のグランギニョル』もね、死んでもどうせ蘇るんでしょ? なーんて思いながら読み進めていたら、
予想通り蘇ったね。
そう、予想通り蘇った。
ちなみに、「グランギニョル」ってどんな意味があるの?
「大衆演劇」のことを指しているらしい。

荒唐無稽、血なまぐさい、こけおどしめいている、あたりに特徴があるらしい。

こけおどし、か。
……と、そんなわけでタイトルにこの文字を入れられてしまうと、ツッコミ要素満載でもツッコみにくく、ならないかい?
いや、別に?
あーあー。しょせん君は猫だね。人間の機微なんてわかんないんだね。

にゃん!

ひん!
いいもん。圭さんがツッコまないんだったら、ぼくがツッコむもん。

まずあれだよ、このからくりで、蘇り後の生徒が前日の記憶をきちんと引きずっているのは無理があると思う。

そ、その辺は技術的にクリアされているのが前提なんじゃないのか。だからこそ、最後にデータだけを軍が回収して体の方は処分してしまおう、って考えたわけなんだし。
じゃあ、そこで女子生徒を使う意味って、何?
い、いや、……なんだろうね?
『殺戮地獄の乙女たち』も内容的にはツッコミ要素満載だったけど、すくなくとも「少女たち」が殺し合うことには意味があったんだよ?
彼女たちは進んで志願していたわけでもあるし、ねえ。

って考えると、何も知らずに巻き込まれて、学期中ずーっと眠らされ続けて、嘘の記憶を植え付けられて解放されるオリジナルって、一体……。

クローンだけがほしいなら、こんな大掛かりな仕掛けは必要ないと思わない?

いやいや灰猫! 君、ちょっと今日は調子に乗りすぎだよ! そんなこと言ってる君だって「春霧! 気持ち悪い!」って叫びながらも食い入るように読んでたくせに!
うっ……。それを、言われてしまうと……。
でも、春霧は気持ち悪かった!(笑)
ラストでなんだかんだと、いい奴になっちゃったけどねえ(笑)
だめだめダメンズな春霧のラストはともあれ、実際のラストもあれはあれで、気持ち悪かったな。
でもあれ、プロローグとエピローグでしっかりリンクはしていたよね。
まあ、確かに。
それから、「逃げろ!」と警告をもらったにもかかわらず、クローンたちが“いつも通り”の放課後を過ごして全滅(メイン以外)してしまうのは、わりとリアリティがあったと思う。
偉そうな御託を並べたところで人間は結局のところ、いつもと違うことができないようにプログラムされているんだよね。
そうだからこそ現状に不満を覚え、革新に憧れる。
しかし革新を前にすれば抵抗し、拒絶する。

人類の歴史というのは、保守と進歩のせめぎあいの中で育まれているとも言える。

それで「高等知性を持った生物」を自認するあたり、人間って本当に愚かで可愛らしい生き物だよねえ。
……しょうがないじゃないか。にんげんだもの。
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