ラ・トラヴィアータ 運命の愛の物語  桐生操

文字数 3,175文字

『椿姫』『ハムレット』『美女と野獣』『ジキル博士とハイド氏』

……官能的に焼き直された古典作品たちの、狂愛の物語。

この作品はとても官能的なお話だよ。

ぼくと圭さんのこれから先の会話も少し刺激的になるよ。


ここから先は18歳以上の人だけ、読み進んでね!

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ん? 君、本当に18歳以上?
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よし、じゃあ、始めよう。
『ラ・トラヴィアータ』の作者は、『本当は恐ろしいグリム童話』で有名な人。(ちなみに共同ペンネーム)

一時期とても流行ったから、読んだことがある人も多いんじゃないのかな? ね? 圭さん?

あれ? 圭さん?
圭さーん!!!
わ!! え? 何? どうしたの?
ちょっと、なんでテレビなんか見てるのさ。
う……う、うん、うんと、うん。
ちょっと。しっかりしてよ。『本当は恐ろしいグリム童話』は読んだんでしょ?
い、一話目が……白雪姫だったよね?
そう、白雪姫。

白雪姫がタブーを犯していることに頭を悩ませる継母が……ってところから始まる物語だよね。

……って、ちょっと何? ひどい顔だよ?
わあ、どうしよう灰猫。ぼくそれ、読んでないんじゃないかな?
……は?
いやあ、ね。本屋で平積みになっているのを手に取った記憶はあるんだ。パラっと試し読みをした記憶も。


……でも、買ってない。

冒頭の継母が心痛めているシーン以降、記憶にないし。

あー、また出たね。圭さんのメジャー外し。
かたじけない。
ってか、なんで? 手に取って最後まで読まないなんて珍しくない?
読んじゃ駄目なやつな気がしたんだ。まだあの当時、ぼくは未成年だったし……。

クラスの……今でいうところの腐女子ちゃんがヒーヒー言ってたのを知っていたから、手に取った瞬間これは自分とは世界が違うぞ、と。

あー、圭さん、性の発達は遅い方だったしねえ。
早熟な君には……。
にゃん?
いえ、なんでもございません……。
ってか、なんだあ!

『本当は恐ろしいグリム童話』から入った方が読者に優しいかと思ったのに、これじゃ目論み外れじゃん。もう。しょうがないから本編に入っちゃうよーだ。

本編に入ることには異論はない。


でも、待って。読者って何? この読書日記に読者なんていたの?

にゃん??
なんでもございません……。
まあ、何?

小器のくせに晩成の圭さんには、この作品も刺激的だったんじゃない?

地味に人をディスるのやめなさいよ!


二股掛けられるとか、既婚者に迫られるとか、破綻も離婚も一通りの修羅場潜ったから、そこそこ太いんだからねっ!

太い? 何が?
言わせるなっ!
そこは言ってもよくなぁい? 何のためにR18にしたのこれ?
確認するけど、本当にこれ18歳未満の良い子は読んでいないよね?


『ラ・トラヴィアータ』は本当に大人の読み物だよ。それもほぼすべてが異常性愛。


健全な男女は出てこないし、その行きつくところの男女は破滅。それでも読み進めることができる人、その異常さゆえの愛が至高と思える人には、向いている。

愛の狂おしいほどの美しさはね、普通の恋愛、普通のセックスからは生まれないってことでもあるんじゃない?
確かに、常軌を逸してはじめて、そこに真の愛が垣間見えるものかもしれないよね。

そして、愛の究極に至れば至るほどに、彼らの身を滅ぼさずにはいられないものなんだ。

この作品集は、『椿姫』『ハムレット』『美女と野獣』『ジキル博士とハイド氏』という4つの古典作品をベースに独自の物語を紡いでいるわけだけど……。
その4つの中で一番完成度が高かったのは『椿姫』かな。


元の話が高級娼婦と誠実な青年との物語であることもあり、マルグリットの客に嗜虐趣味があってもなんら不思議なことはなく、マルグリットが求められるままにどんな体位にも応じる女で、決して一人の男では満足しない女だとしてもそれは、そうでしょうよ、と。


ストーリーの流れ、そして登場人物たちすべての破滅のさせ方を含めて、一番美しく纏まった物語だった。

ラスト一歩手前の輪姦シーンは、映像にしたら凄まじそう。
しかもそれをアルマンに見せつける。女って怖いわー。
逆に、1番ダメだった話は?
『ハムレット』


これはダメだと読みながら思った。原作負けしてる。シェイクスピアが偉大過ぎるのかもしれない。

オフィーリアをハムレットの腕の中で死なせてあげるのは、作者の優しさかと思ったけど……。
そりゃ、君がバジリオの腕の中で死ぬ運命だから共感しているだけなんでは??
む。別にそういうことじゃないし。
まあ、いいんだけど。


ぼくはね、オフィーリアは狂って池に沈んでこそ、その美がきらりと輝くヒロインなんだと思うんだよ。

ミレーの描いた『オフィーリア』は君だって知ってるでしょ?

あの美しさに勝る死はない。それを、ハムレットの目の前で毒を煽って「ハムレットさま、わたくしもともに参ります」な展開には、がっかりした。


そこ以外にも、この話は無理矢理感があるんだよね。

古典作品には合理的でない、あるいは辻褄の合わない展開が稀にあるんだけど、それを現代作家がやってはだめだと思う。

なるほどねえ。残る話は2つだけど、どっちを先に語る?
『美女と野獣』でいってみようか。
夜な夜な野獣が送り込む美男子とベルがにゃんにゃんする話ね。
ヴィルヌーヴ夫人版だろうがボーモン夫人版だろうが、夜な夜な訪問するのは野獣自身で、毎度その求婚を蹴り飛ばすのがベルなんだがねぇ(笑)
夜な夜なその情事を覗き穴から覗いて一人寂しくヌいてる野獣なんて、想像するだけで可哀想に思ってしまうんだけど……。
君、人外に優しくない? 夜な夜なドラゴンを相手にしているせい?
にゃん?
なんでもございません……。
まあ、それはともあれ『美女と野獣』のびっくりポイントは、途中から城に紛れ込んでベルとねんごろになるイケメン聖職者を野獣が処刑して直後。
ぼく、この場面転換すんごくキライ。三文小説家みたいなことやらないでほしかった。
どういうこと?
ストーリーの流れからは絶対に誰にも想像し得ない驚愕のどんでん返しをもってきたってこと。書きながらどや顔する作者が見えるよう。


これがまた、ぼくらアマチュアが安直にやりがちな場面転換なんだよねえ……。

まあ正直、そこでひっくり返すなら途中途中で伏線しこめと思う。プロなんだから。

原作知ってるよね、という甘えさえ感じる。

なんか、この流れで最後の『ジキル博士とハイド氏』を聞くのは怖いなあ。
これは高評価よ?


グロ好きなぼくの性癖に見事にマッチした。

グロいの好きだよねえ。ほんと、圭さん、気を付けないと犯罪者にされちゃうよ?
グロいの好きだからこそ、敢えて蒐集していないもんね!

ちなみに、過去1番自分が食いついたグロ描写は『残夢 -LABYRINTH-』の最初の犯人が発見された時のあの描写。

あれは、濡れたね……(しみじみ)

グロ好きな割に、グロ系の作品は作らないのなんで?
好きなものは誰とも共有しないんだよーだ。
ふうん。
ごめんなさい、書けないだけです。
『ジキル博士とハイド氏』のグロ描写は、やはりラストが凄惨だったかな。
ラストは想像するだけでウハウハしてしまったけど、それ以前もなかなか良い描写が随所にあったよね。


男根を切り落とすやり方とか、股間に入れ墨を入れるところとか、他の3つは男女の異常なまぐわいをハァハァする系だったけど、『ジキル博士とハイド氏』の場合は性の対象年齢が「子供」になっている時点で他とは一線を画していたと思う。

実はさ、トリを飾った『ジキル博士とハイド氏』くらいは救いがあるんじゃないかと期待してたんだ。
なかったねえ……。もしかしてこの夫婦は上手くいくのではないかと期待できる描写も確かにあったんだけど、結局は破滅したねえ。
全話で破滅する男女の物語か。
究極の愛は男女を破滅させずにはいられないってことなのさ。
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