チロンヌプの魔法 Suzugranpa
文字数 1,034文字
ステキな縁結びスポット
序章の燃え盛る森の描写で、これは一体どんな話になってしまうのか……とそわそわしました。蓋を開ければ心温まる、優しさにあふれた物語でした。
家族を失ったオオカミとキタキツネとの間に生まれる代々の子どもたちが、誰かと誰かの縁が結ばれるのを見届ける。チロと名付けられた今回の影の主役は積極的な何をした、というわけではなかったですが、そういう特別な魔法を背負っているというのが、くすぐったい。人と人との間を結ぶ橋、よりよい明日になるようにと架かる橋……作中曲の『明日に架ける橋』をぜひにも聴きながら楽しみたい作品でした。
みんなが同じ考えじゃない、いろんな意見がある。
……というのが人間関係の良さであり、難しさですよね。
沙良が「テンション」の使われ方に違和感を覚え、受け入れられなかった気持ちはわかります。かくいう自分は今でも「リベンジ(復讐)」が「再挑戦」の意味で使われていることにドキドキしています。(特にスポーツの国際試合で、インタビューを受けている選手が使っているのを見ると……)
きっと沙良も、その使われ方は日本オリジナルとして受け入れて、外人に使っても通じない、くらいの軽い感じで意見を言えればよかったのでしょうけど、どうしても「間違いを正そう」と頑なになってしまうのは若さゆえ……なのでしょうね。大人になるとねじ伏せる力を持った人以外は、この手のことはなあなあで済ますようになりますから、若さって恥ずかしくもあり、同時に羨ましくもあります。
美月も意地悪しましたが、それだって、彼女には彼女なりの意見があったわけですものね。
最後は美芽をかけ橋に二人の仲が結ばれて、ほっとなりました。
秋野さんはまさかのまさかでショックでしたが、涼太とのことを考えるとこっちの結末の方が確かにハッピーエンドなので、納得しつつもとても複雑です。(いや、絢ちゃんのためには、これでよかったんだ。うん。納得)
これは挙げるときりがないのですが、
「傷ついてもきれいなメロディを奏でられる。人の心と一緒だよ」
「いろんなものを受け入れてみて、それでずーっと残ってゆくものがきっと本物」
……など、作中にあるたくさんの素敵な言葉にはっとさせれたり、深くうなずかされたりしました。
神来の森に縁を結びに、自分も行ってみたくなりました。