脱走と追跡のサンバ  筒井康隆

文字数 2,254文字

ここは、おれが以前いたところではない世界――。元の世界に戻ろうとする「おれ」の奮闘を描く異色のSF長編!


どんなことがあっても脱走してやる。このいやらしい世界から逃げ出してやる。こんなところに閉じこめられてたまるものか。汚物の墓場の下水管を通り抜けもとの世界からこっちの世界へ入り込んでしまったおれは……。情報による呪縛、時間による束縛、空間による圧迫にあえぐ現代をパロディ化し、境界のゆらぎはじめた現実と虚構の「世界」を疾走する傑作SF長編。


角川HPより引用

https://www.kadokawa.co.jp/product/321407001432/

話がまどろっこしいの!

……う、うん。

冗長であるのは否めないよね。冒頭のもやっとループ表現で「無理!」と心折れる読者は多いと思う。

まあ、圭さんも3回くらい寝落ちしてたしね?

はははは。

最近知ったけど、寝落ちって寝ているんじゃなくて気絶しているんだって。

これ読みながら3回も気絶したのかと思うと苦笑しかない。

はっと気づいた時にどこまで読んだかわからずページを何度も行きつ戻りつしてしまったもんなあ……。

1文がね。前半フツウ後半デタラメで構成されている分が多いんだよね。

それでもう、無理ってなる。

猫には難しい!

猫じゃなくて人間でも難しいよこれ。文章が後半で頓珍漢になってボロボロ壊れていくところは作品の「らしさ」を醸すための演出で、この発想を自分ができるかっていったら絶対にできないんだけど。

そして、それを前提にしてもさ……この奇想天外なノリのまま延々と物語を続けられてしまうとこっちの精神が抉られる。

北杜夫くらいで留めておいてくれないと。読者は一般人なんだから。

北杜夫も確かにデタラメな作家だねえ。

「さびしい王様」シリーズの……誰だっけ、チャレンジャー博士だっけ?(絶対違うな、忘れちゃったな)……が、何かすっとんだことを発言した後に「間違いない!」でチャラく(本人的にはきりりっと)締めくくってくれるのとか、安心するもん。

まあ、北杜夫はぼく的にはエッセイを推したい作家なのさ。

……ああ、すごいデタラメだよね。デタラメすぎてニヤニヤしてしまう。

躁鬱の躁期に株を買いあさるやつが一番好きかな。あと、深夜に誰かれ構わず電話かけまくる、とか。

普通に大迷惑なんだけど、どうしても笑っちゃうんだよね。

絵面が脳内に浮かぶくらい面白いよ!

デタラメはこの程度で留めておいてくれないと、「面白い」を通り過ぎて宇宙の果てにまで行ってしまうことになる。

確かに、そう考えると『脱走と追跡のサンバ』って突き抜けてるんだ!
そう。

つまりはこの本を真面目に読むのは愚かで、飛ばして読むのは傲慢である。

……なに?

読み終えて、そんな風に思ったってこと。

ちなみに序盤で登場するSF用語の羅列の箇所は、読んだ?

いや、斜めに読んだ。じゃないと挫折しそうで。

だねえ。

あそこはしつこすぎて斜めに読みたくなるけど、斜めに読むのはもったいないと思うよ。そのくせ、生真面目に読むと馬鹿を見る。

デタラメだから?

そう、デタラメだから。

デタラメでありながら皮肉がすごいのもこの作品の特徴なんだけどね。

デタラメな作品ほど風刺的であるとぼくは思ってるよ。

ああ、前に紹介した別役実の『魚づくし』なんかもそうだねえ。デタラメってのは真実を隠しやすいんだと思う。

……って、あ、そうか。

ん?

前に金城孝祐の『教授と少女と錬金術師』を読んだ時に「わっかんないなー!」と持ったんだけど、あれからはデタラメによって何を炙りだしたのかがぼくには見えなかったせいなのかも。

ぼくの知的レベルが低すぎたんだね。

『教授と少女と錬金術師』も、『脱走と追跡のサンバ』も、単に作家の知識をひけらかしているだけにも見えなくもないよ?

圧倒的知識量ではあるよねえ。

五十嵐律人の『法廷遊戯』もそっち系じゃないかな。圧倒されるでしょ?

圧倒してくる作品って、結局は読んでて疲れるってことなんだね……。

価値はあるけど、読み手を選ぶよね。

優れた騎手が馬を選ぶのと同じ感じ?

ああ、すごい騎手が乗るとボンクラな馬は一瞬で潰れるっていわれているかも。
ちなみに、『脱走と追跡のサンバ』に関しては心が折れても挫折はしなくない?
……なんで?
作品のフレームがわかりやすく最初に提示されているから。
空間による圧迫、情報による呪縛、時間による束縛。

そうそう。主人公が次に何に挑みかかるか、読者はわかっているわけだ。

先がまったく見えない小説ってのは「しんどい」に「不安」が積み重なるわけだけど、ある程度の道筋を示している作品はきちんと読ませてくれるんだよ。

でも、言っていい?

何?
空間も情報も時間も、たしかに含蓄があり納得するものもあったし、それに挑む主人公の姿にんふんと頷きながら読むこともできたけど、実際には全部をストーリーの半分で使いきっちゃってるんだよ、これ。

あははは!!!

そして後半は怒涛のすっかちゃめっちゃか大騒ぎ。すごかったよね。ここまで読んだら最後まで読むしかないから、ちゃんと我々は作家の罠にハマったんだ。

うわあ、作家の掌の上でぼくらは踊らされたのか。

そういうことなんじゃない?

この本、絶版なのかな?

探せば別の作品集とかに収められている気もする。それに、電子書籍が出ているみたいだね。

電子書籍で読んだ方がいいかも。

いや、電子書籍で読むべきだ。

……なんで?
老眼に厳しかった!!(文字が小さすぎる)
まさか3回も寝落ちしたのって、文字が小さすぎたのも原因なの?
……否定しない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

よろしくね!

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色