ゆうとりあ  熊谷達也

文字数 3,481文字

いざ、定年。あなたは何を始めます?


熟年世代向けの理想郷“ゆうとりあ”。蕎麦打ちをはじめた佐竹は、妻とともに移住するが……。第2の人生をコミカルに描く傑作長篇


(文藝春秋HPより引用)

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163280301

タイトルを見た瞬間に脳内スタローンが「エイドリアァァァアン!」と叫んだポンコツな圭さん、こんにちは!

……え? 今日はどうしてまたそうも辛辣なの? ぼくまた何かした?
おや? 何かした覚えが?
ひっ! ごめんなさい! 冷蔵庫の牛乳プリン食べたのぼくです!
え?

え?

えぇぇぇぇえ! 今度のおやつと思って大事にとっておいたやつだったのにぃぃぃぃい!!

……は?

え?

これのことじゃないの?

他に何かした覚えが?
君が毎日ちょっとずつ作ってたジグソーパズルの最後のピースを夜中にこっそりとはめ……。
…………。

ん?

ほかには?

…………? これなんか、何? え? 何?

だって突っついたら他にも出てきそうじゃん?
で、出てきません! 出てきませんよ!

ふーん、ほんとかなぁ?

ほんとですって!
……ま、いっかぁ。
へ? いいの?

……というわけで、今回の読書は『ゆうとりあ』。定年退職した団塊世代の話だね。

ちょっと! 強引に話を元に戻された気がしなくもないけど! ……まあ、うん、そうだね。

ぼくらより若い世代からは「老害」のレッテルを貼られがちの世代だよね。

まあ、老害か老害じゃないかは人によるとしか言いようがないと思う。
本当に。たとえばぼくらより若い世代、ぼくらの世代、さっと見渡しても定年退職後に老害化しそうな人間は普通にいるもんだよ。
たとえば圭さんとかねー!
き……気を付ける!(震え声)
でもまあ実際に?

団塊の世代ってオイシイ思いをしているようにも思うんだけど、実情はどうなんだろう?

今時点でもお金は持っているイメージはあるよね、ぼくらより。

そして、今後にわたってもぼくらよりたくさんの年金を手にするんじゃないかな、というイメージもある。

そういうところも含めて、ずるいな、とやっぱり思ってしまうかな?

団塊の世代にも言い分はありそうだけど。

時代が違う。物の価値が違う。考え方が違う。

同じ尺度で測れないものたちが「今」という時代にまるっと収まっているから齟齬が生まれ軋轢になるってことなんだろうな。そんな気はしている。

でもやっぱり、お金は持ってそうだね!
今回の「ゆうとりあ」じゃないけど、定年退職後の団塊世代をターゲットにした商品はそれこそいっぱいあるもんなあ……。
でもそれって、裏返したらぼくらが団塊の世代のお金に寄って集ってむさぼっているだけにも見えるよね?
世の中、お金のある所に人は集まるものなんだよ……。
さてさて、前置きが長くなっちゃった。

この『ゆうとりあ』はどこから切り崩そうか?

個人的には 田 舎 暮 ら し な ス ロ ー ラ イ フ を夢見て「ゆうとりあ」に引っ越して以降が愉快すぎて面白かったと思うけど。
引っ越しの挨拶に行った家で犬に吠えられたシーンは声立てて笑った!

犬嫌いが背に腹は代えられぬと犬を飼う。そして結果的に親ばかになる。あるあるで好き。

ああでも、その前に引っ越し以前のところも語ってもいい?
主人公の他、同じ会社で汗水流した同期のおじさんズのその後が描かれるところから物語が始まるんだよね。
一人は退職を機に「俺はまだまだやれる」と一念発起、通販会社を立ち上げようとして妻に愛想尽かされる。

男の言い分、女の言い分、フィクションではよく聞くケースだけど……。

いやいや、リアルで圭さんが遭遇したケースじゃん。
んー……。
そうだって。ただ離婚のタイミングが早かっただけだって。
一緒の空間にいると息が詰まるでゴメンナサイしたって意味では、そうか……(遠い目)
で、二人目は趣味に突き進み……。
ある意味理想的だと思う。ぼくだって第二の人生は思う存分ハッスルしたい。
ハッスル? 何かやりたいことでもあるの?
……何もない。
ごめん、その答えは予想外。むしろモノカキ道を極めるくらいのこと言うかと思った。
んー……。

まあ、モノカキはとっくに引退しているんだろうけどさ。

今やどちらかというと、モノカキ道に迷い込んでもがき苦しむ書き手を遠目で応援している感じになっちゃったよね……。

あ!

最近ちょっとだけ読むペースを上げているのはそれのせい?

実は……NOVEL DAYSに投稿された作品に対して最低でも1日1作品は感想寄せようと思って挑戦しているところなんだ。

まあ、こういう挑戦だと対象がどうしても短編、むしろ掌編になってしまうのがもどかしいところなんだよね。


もちろん長編もボチボチと読んではいるけど、まだNOVEL DAYS限定とまでは言い切れなくて。

今年は特にぼくの小説に感想くれた方々へのお礼もしなきゃと思っていて、それがかなりの数たまっていて……長編についてはどうしてもそっちが優先になってしまう。

……ねえ、繰り返しちゃうけどNOVEL DAYSってこのままサービス続けてくれるのかな?

ここって文芸寄りの作品が多いせいなのか、本当にどんどん寂しくなっていくよね。

実際は適当に選んで読んでも、だいたい面白い作品に当たれる良質のサイトなんだけどさ。


ま、倒れたら倒れたで、仕方ないと諦めるしかない。

だってほら、某サイトも「小説」は残したけど「文芸」は閉じるじゃない? 閉鎖したあのサイトも「ライトノベル」はそこそこ盛況だったのに「ライト文芸」は酷い有様だったしさ。


文芸そのものがWEBで流行らせることが難しい部分があることは紛れもない事実で、書く方に需要はあっても読む方にあるかと言われたら難しい気がするんだよ。

だって、隙間の時間に読めるというのがそもそものWEB小説の醍醐味なんだから。

文芸系に特化した投稿サイトってやっぱりだめってこと?
大々的に「文芸」を謳った先で成功した例を今のところ見たことがないんだよねえ……。もちろんこれからはわからないけどさ。

なんだかんだと今でも文芸なら純文学に特化した星空文庫が最強なんじゃないだろうかと思ってる。って、話が脱線しすぎたね、ごめん(汗

では最後の一人、主人公。

長年住んだ郊外の自宅を売り払って「ゆうとりあ」に引っ越すわけだけど、その自宅を売り払ったで起こる娘の不貞腐れ感が好き。

相続を当て込んでたのにねってやつね?

でもぼくは、彼女の気持ちがわからなくもないんだよ。ぼくの実家も父親の退職を機に新しい家に越しているから。

その辺のすったもんだについては圭さんの結婚離婚問題が絡んでるから語るほどに面白いじゃん?

語らないよ? 

……語ればいいじゃん。
やだよ自分の恥じゃないか。というわけで、ここからようやく本題!

あ、逃げた。

「ゆうとりあ」に越して以降の「こんなはずじゃなかった!」にはやっぱりニヤニヤと笑いたくなるものが多かった。
ぼくはね、もとからの住人が住んでいる隣のF地区挙げての歓迎会シーンで、主人公が「田舎で披露宴を2回やらされた」を回想するところが好き!
リアルのぼくも、実は2回披露宴をやらされたクチ。

あの当時はもう本当にびっくりしたし終わるまで頭が痛かった。

坊さん出て来たり地区のまとめ役が出てきたり、まさにまさにって♪

田舎あるあるなんだなーはこれを読みながらしみじみと思ったよ。

だから次は絶対、日本に移住してくれるドイツ人と結婚する!

なんでドイツ人?

筋肉が割とぼくの理想に近いんだみんな……。

ふーん……。
こほん!


作中の「こんなはずじゃなかった!」は田舎の近所づきあいのほかにも、自然豊かな環境ならばこその害獣問題もあったよね?

あれは結構考えちゃうテーマだった。

何を選ぶにしても人間のエゴでしかないんだって思い知らされた。

結局は正解がないってことでもあるんだね。

自然と人間、難しい問題だけど、避けても通れないテーマだと思ったよ。

この作品に書いてあることはなかなか興味深かった。

そんな中で、作品からは人間の生き方みたいなものが滲み出てくるよね?

そう、主人公が人生を振り返る工程がこれまた良い。彼らの言い分、彼らの価値観、彼らの悲哀……それでまさか、最後の最後にお遍路の旅が待っているとは思わなかったけど(笑)
すっと笑わせてくれてたのに、あの最後の場面はウルっと来ちゃった。

なんかねー。

人生っていいもんだなーってシミジミと思ったよねー。

反省し、それを活かすのもまた人生!

うんうん。本当にそう。

それで、圭さん?
ん?
ぼくに謝ることがほかにもまだあるんじゃない?
…………。
あ、逃げた!
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