その指先から 小泊
文字数 586文字
美しく、切なく
純度の高い西欧風ラブロマンスでした。
西洋の風習については詳しくないのでわかりませんが、そういえば江戸時代には「丙午の年に生まれた女の子」や「親の厄年に生まれた子ども」は“間引き”の対象だったという話を聞いたことがあります。
13という忌み数があるくらいだから、西欧にも忌み日はあるのかな。
いずれにしても、忌まわしいとされている日に生まれた子供に待ち構える残酷な運命は、「あるかも」と思わせる説得力があるように感じます。その不条理もまたしかり。
そして、迷信を作るのが人ならば、そんな迷信を打ち破るのも人なのだ、と思わせてくれる作品でした。
作中のイグナーツが、あらゆる意味でかっこよかったです。
潰れた花、ぬるいお茶、黒焦げの菓子、水に塗れた写本、折れた人形……のくだりはあまりに微笑ましく、読んでいてにやりと笑いがこぼれたほどです。
おとぎばなしにあるような、「永遠に幸せに暮らしましたとさ」にはなりませんでしたが、でも、決して彼女が不幸であったわけではない。
このような物語の終わり方は切なくも美しく、清らかな余韻を残すように思います。ステキなお話でした。