かぐや姫のかくしごと  楠木薫

文字数 1,898文字

平安時代、都には帝も気に入る絶世の美姫がいた―――名はかぐや姫。超有名人の彼女が、実は天上の世界から来た『男』だった…というとんでもない秘密を知ってしまった孤独な少女・ツバキは!?


(「マンガPark」より)

https://manga-park.com/title/6002

かぐや姫の物語──一般的には『竹取物語』と呼ばれることが多い日本最古の物語だね。実は中学の時に国語の教師から、「これにはモデルとなった中国の物語がある」と、教わった記憶があるのだが……。
この時代にこれだけの完成度だし、モデルがあっても不思議はないんじゃない?

まあ、そもそもとして日本人は無から「オリジナル」を生み出すことが不得意だから。

でも、外から要素を取り込んで自分たちの体に合うように作り替え、結果オリジナルを超える品質にまで磨き上げる能力は負けていないと思う。

で? 『竹取物語』の原点はどれになるの?
それが、わからない。
……へ?
中国というか、チベットの古い物語に『斑竹姑娘』というのがあって、調べた限りではこれが『竹取物語』に似ているようだ。でも、この物語はむしろ『竹取物語』を元に作られたとみられているらしい。
じゃあ、中学の教師は嘘を教えたの?
うーん。勘違いだったのか、あるいは、後に学説がひっくり返ったのか。
なんにしても、『竹取物語』は二次創作のしがいのある作品だと思う。

かぐや姫が月を出て地上に落ちた、それはいかなる「昔の契り」によるものだったのか、そして、いかにしてその事情は解決したのか。

実はこの作品には、かなりの謎があるんだよね。

そこにロマンを感じた分だけ、多種多様な「かぐや姫」が生まれえるのだろうとぼくも思うよ。

月世界をSF的な科学技術の(すい)を集めた文明世界に仕立て上げる作品もあるよね。

かぐや姫の成長の早さや、月から地上に降り立てる技術、あるいはその逆。その当時の、いや、今と比較してさえその技術は圧倒的なんだよね。SF作品だとみなされても不思議はない。

おそらくこの物語、魔法を否定すればSF的になるし、魔法を許容すれば神話的・ファンタジー的になるんだろう。

そういえば、『かぐや姫の物語』というジブリ映画を先日観たときに気付いたんだけど、その月世界を仏教的な天上界に見立てる考え方もあったんだね。
いや、ぼくはあれを見た瞬間「ほえ・・・?」と固まってしまったんだけど、実は今回読んだこの作品も天竺風な月世界を描いているから、クリエイターたちにとって月は案外こういうイメージが一般的なのかもしれないよ。
ぼくのイメージは中華風なんだよな。竜宮と同じで。
中国というか、飛鳥時代というか? 海の底の話は古事記にも登場するからこそ、そのあたりでイメージが固まるんじゃないか?
そうなると、『竹取物語』のイメージって平安時代であるべきなの?
まあ、そのあたりは……。
なんだか歯切れが悪いなあ?

さてさて、本作『かぐや姫のかくしごと』。

説明書きにもあるとおり、かぐや姫が実は男でしたという、とんでも話。
性格悪くて笑うよね。
その呪いに何の意味があるのかとか、お付きの二人がどう見ても人間じゃない件とか、こんなチャラい天皇がいたらいやだなとか、ツッコみたいところは山のようにあるけど。
総じて、「とりあえず目をつむっとけ!
むしろ無実の罪を着せられて、それで月に帰ったところでどうなんだろうという思いがあり、そこから先を展開させた方が面白くなるんじゃないかとぼくは思った。

五つの宝を探している最中(さなか)で話が終わってしまうの、ちょっと残念なんだよね、これ。

二人の関係に結論が出る、という意味ではすっきりしているんだけど、どうにも、もや~っとなるのは否めない。

うん。
そういえば、女性が月世界に行ってしまって、それを追いかけていったら彼女はまるで別人で……みたいなアニメが昔あったと思うんだよね。あれ、なんだったかなあ。
それは知らないけど、地上(汚れの世界)に住んだかぐや姫が天上の薬を舐めて、天の羽衣をまとって「愛おし、悲しと思しつることも失せ」てしまうあたり、そもそも宇宙人と地球人とでは感じる心が相当違っているんだとぼくは思ってる。
そうなると地上に落ちたかぐや姫がどうして地球人の感性を持ちえたかについてツッコみたい気持ちも出てくるんだけど、さはさりながら、そのあたりの感覚差を描けた当時の平安人がすごくないか、と、思ったり思わなかったり。

平安時代には、宇宙人との交流が実はあったのかも。

……ええ?
いやいや、圭さんだって好きでしょうが、そういうの。
うん、ピラミッドは宇宙船の格納庫だったと今でも信じてる。(真顔)
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