かぐや姫のかくしごと 楠木薫
文字数 1,898文字
平安時代、都には帝も気に入る絶世の美姫がいた―――名はかぐや姫。超有名人の彼女が、実は天上の世界から来た『男』だった…というとんでもない秘密を知ってしまった孤独な少女・ツバキは!?
(「マンガPark」より)
かぐや姫の物語──一般的には『竹取物語』と呼ばれることが多い日本最古の物語だね。実は中学の時に国語の教師から、「これにはモデルとなった中国の物語がある」と、教わった記憶があるのだが……。
まあ、そもそもとして日本人は無から「オリジナル」を生み出すことが不得意だから。
でも、外から要素を取り込んで自分たちの体に合うように作り替え、結果オリジナルを超える品質にまで磨き上げる能力は負けていないと思う。
それが、わからない。
中国というか、チベットの古い物語に『斑竹姑娘』というのがあって、調べた限りではこれが『竹取物語』に似ているようだ。でも、この物語はむしろ『竹取物語』を元に作られたとみられているらしい。
うーん。勘違いだったのか、あるいは、後に学説がひっくり返ったのか。
かぐや姫が月を出て地上に落ちた、それはいかなる「昔の契り」によるものだったのか、そして、いかにしてその事情は解決したのか。
実はこの作品には、かなりの謎があるんだよね。
そこにロマンを感じた分だけ、多種多様な「かぐや姫」が生まれえるのだろうとぼくも思うよ。
かぐや姫の成長の早さや、月から地上に降り立てる技術、あるいはその逆。その当時の、いや、今と比較してさえその技術は圧倒的なんだよね。SF作品だとみなされても不思議はない。
おそらくこの物語、魔法を否定すればSF的になるし、魔法を許容すれば神話的・ファンタジー的になるんだろう。
いや、ぼくはあれを見た瞬間「ほえ・・・?」と固まってしまったんだけど、実は今回読んだこの作品も天竺風な月世界を描いているから、クリエイターたちにとって月は案外こういうイメージが一般的なのかもしれないよ。
中国というか、飛鳥時代というか? 海の底の話は古事記にも登場するからこそ、そのあたりでイメージが固まるんじゃないか?
まあ、そのあたりは……。
さてさて、本作『かぐや姫のかくしごと』。
性格悪くて笑うよね。
総じて、「とりあえず、目を、つむっとけ!」
五つの宝を探している
二人の関係に結論が出る、という意味ではすっきりしているんだけど、どうにも、もや~っとなるのは否めない。
そういえば、女性が月世界に行ってしまって、それを追いかけていったら彼女はまるで別人で……みたいなアニメが昔あったと思うんだよね。あれ、なんだったかなあ。
それは知らないけど、地上(汚れの世界)に住んだかぐや姫が天上の薬を舐めて、天の羽衣をまとって「愛おし、悲しと思しつることも失せ」てしまうあたり、そもそも宇宙人と地球人とでは感じる心が相当違っているんだとぼくは思ってる。
そうなると地上に落ちたかぐや姫がどうして地球人の感性を持ちえたかについてツッコみたい気持ちも出てくるんだけど、さはさりながら、そのあたりの感覚差を描けた当時の平安人がすごくないか、と、思ったり思わなかったり。
……ええ?
うん、ピラミッドは宇宙船の格納庫だったと今でも信じてる。(真顔)