狐さんの恋活  北夏輝

文字数 2,024文字

狐面に着流し姿の「狐さん」は、奈良公園で会った春菜に恋心を抱くが、春菜のメイド七瀬から「無職男性との交際など認めません!」と罵倒され、就活を決意。友人の烏からレクチャーを受ける。一方、以前、狐さんを振った女子大生ビンバは、その理由が勘違いだったと知り、またしても狐さんへの想いをふくらませていく。二人の女性の狭間で狐さんの恋路は如何に?


(「講談社BOOK倶楽部」より引用)

http://book-sp.kodansha.co.jp/topics/koikatsu/

もう、ダメ。狐さんがあんまりにポンコツで笑いが止まらない。
1巻を読んだ時にはこんな展開になるなんて予想だにしていなかった。狐さんのダメっぷりにはとにかく驚く。
1巻にはまだ探り探りの感じがあるんだけど、2巻でどんと構えてからの堂々3巻って感じだよね?
うん。

2巻も面白かったけど、3巻に関してはさらに弾け飛んだ感があって、いろいろとおっかしい!

まあ、まずは七瀬さん?

のっけからのあの登場の仕方は、ある意味ホラー。

先日、コメディーとホラーは紙一重──という感想を某所で書かせてもらったのだけど、七瀬さんのあの行動はフィクションだから面白いのであって、現実にやられたら恐怖でしかない。

狐さんを認めない態度も頑なすぎて……!
しかし強引ではあるし極端ではあるものの、七瀬さんの言っていることは至極もっともなんだよ。

無職の男が大事なお嬢様の恋人だなんて、認められるかい?

ぼくが七瀬さんと同じ立場でも認めないね。

まあ、そういうわけでようやくにして狐さんの就職活動が始まるわけなんだね。
1巻、2巻と無職を貫いてきたのに、恋はかくも人を変えるのか!
その割に、就職活動はまるでうまくいかないから笑ってしまう。
これに関しては、烏さんの功績が大きいね。
そこも笑ってしまうポイントだよね。狐さんはいろんなことを屁理屈で押し通そうとするけど、結局は烏の正論に押し負けてしまうあの構図。
狐さんのイジケた感じにニヤニヤしちゃう。でも、結局はそんな烏さんに最後までお世話になるんだもんな。
なんだかんだと世話を焼くのが烏は好きなんだろうよ。

そういうところは揚羽に似ている。

さて、一方の恋人役である春菜。

あのタイミングで恋心に気が付くか? 遅いわ! と、読みながら思わずツッコミを入れた。

もうとっくに気持ちに気付いているのかと思いきや、だったね。
しかし、気付いてからの可愛らしさは、たまんなかったよ。

面接に向かう狐さんを駅で待ち構えてプレゼントを渡すシーンなんかもそうだね。

「ああ、この子は狐さんのことをよくわかってるな」と感心してしまった。

なんだかんだでこの二人は、やはりお似合いだったんだ。

……となってしまうと、1巻で最初に恋人候補に躍り出てきたビンバさんが問題になるんだけど。

ぼく、今回の3巻は狐さんとビンバの2人が同格の主人公だったんじゃないかと思う。

狐さんを意識するあまりに後輩の春菜を思わず避けてしまうのも乙女心だよね。

初登場の佐倉さんを踏み台にして、狐さんへのバレンタイン菓子を用意してしまうところなんかも心苦しかった。
あの時点で佐倉さんがビンバさんにメッチャ気があることを読み手はわかっていたから、どうしても佐倉さんが可哀想で。
バイト先のコーヒー店に連日のように手作りの菓子をもってやってくるの、どう見たってあからさまだったよね。
だからこそビンバさんからブラウニーをもらった時の佐倉さんの気持ちを思うと……。

狐さんの家で同じラッピングのブラウニーを見つけてしまった佐倉さんの気持ちもね。

相当に複雑だったろうな。

でも、そこでへこたれないのが佐倉さんのカッコいいところだよ!
あのシーン、作者は敢えて書かなかったでしょ? 書かなかったからこそ色々と想像しちゃってムフフになれる。そこがいい。

だねえ。

ブーツでうまく走れない、泣き顔でぐっしゃぐしゃ……のビンバさんを捕まえて──いろいろと、あったのだろうな。

冷静に考えると狐さんは世間ズレしすぎているし、今後のことを考えるとビンバさんには佐倉さんの方がお似合いなんだよ。

なんせ仕事もできる、料理もできる、気配りもできるな優良株だしね。

難点も、気の強い姉がいることくらい?
背の低さは?
問題にもならない。
とまあそんなこんなで、ラストはきちんと狐さんが就職できるのかどうか。

ここで思わぬ助っ人になったのが佐倉さんというのが、『猫弁』シリーズ並みに世間が狭いな、とも思ったりするのだが、烏さん経由の佐倉さん紹介という思わぬ形で就職の口が舞い込んでくる。

一波乱、あったけどね。

七瀬さん、何もあんなところで倒れなくても(汗
でも、それで七瀬さんを味方にできたと思うから結果オーライでしょう。
面接、狐さん、春菜、七瀬さんの3人で一体どんな奇術を披露したんだろうね。
ちょっと見てみたい気もする。

……とまあ、そんな感じできちんと大団円を迎えて大満足な最終巻だった。彼らみんなに、幸せあれ。

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