第130話 別れ近しか

文字数 568文字

 我が同胞の数珠真珠の赤い実が太らないまま、ベランダでダウン寸前である。
木が大きくなりすぎて、部屋には置けないのでベランダに出した。梅雨の季節だから、水分も取れるだろうと、安易な気持ちで外に出した。ところがこの暑さである。朝晩水はたっぷり与えているが、熱中症にかかった。秋のように葉がハラハラと落ちてゆく、黄色くならずに枯れ色で落ちる。 新聞紙を広げて部屋に入れて、ご機嫌をとっているが、刻一刻と衰退してゆく。小さい花の枯れるのも不憫であるが、大きな木と名のつく花の最後を見るのは心が痛む。主がしやんとしないから、同胞もひ弱いのであろう。ごめんごめんと撫でると、またはらりと葉を落とした。葉は親である幹を守るために散ってゆくのだ。自然の成り行きと言えばそれまでだが、自から散ってゆく数珠真珠の葉に心惹かれている。近くの便便局の奥さんが下さってやがて2年。唯一自慢の家族だった。自慢したぶん種から育てた苗を配ったものだ。どこかできっと愛されて赤い身をつけていることだろう。生きとし生けるものみな終わりが来るのだ。葉の影で何とか赤い実をつけているところを見つけて、カメラに収めた。
「この子『木』を護る」と言う責任と希望に生活に張りができた。この場で復活したお話ができることを楽しんでいる。この子と共に今日も頑張ろう。エイ、エイオー。8/10

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