第31話 最後の晩餐(2)

文字数 437文字

 蕎麦ごめは茹でてよく洗うと、帽子が剥がれ白くなる。
鶏肉で出汁をとり、にんじん、大根、竹輪、細いネギを
一寸くらいに切り入れた。今どきの人は知らないだろうが、
昔はお味噌汁に一寸に切ったネギと出汁雑魚が入っていた。

何人が反応するかと思いきや、全員がネギを懐かしがった。
やはり、みんな昭和を生きた者たちだ。何か嬉しい気がする。

 錦市場の茄子の漬け物をいただいたので香のものにした。
 これは絶品であった。
 コーヒーはインスタントしかない。

 話が弾んでいるうちに鬼籍に入った、まりこと、Hの思い出
話になった。まりこは、ひばりのモノマネがうまかったなー。

 終生、個人的に会うことはあっても、木曜会としては会う
ことはない。つるべ落としの感否めない。
20数年のドラマに幕を下ろしたのだ。楽しい集いだった。
行動範囲がだんだん縮小されてゆく。仕方のないことである。
 私は佐藤愛子の絶筆に背を押されて散会を決意したのだ。
 友よ同胞よありがとう。
 老の坂に、添えて貰った季節の野の花を私は忘れない。



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