第124話 とんでしまった

文字数 991文字

 16日昼から17日昼までの記憶がとんでしまった。
医学的には解明できるのだろうが。16日昼過ぎ、大量の買い物に行った。
曾孫が生まれた。娘の家には息子夫婦が帰ってきて、その上、娘夫婦も暫時、
同居していると言う。
「それは大変だろう。何かいるものがあったら送るわ」
「何を送ってくれてもありがたいわ」そんならと買い物に出かけた次第。
買い物の間、息子がつききっている。「いいから自動車へかえっていて」「荷物大変だろう」
息子は大量の買い物をマンションの中まで持ち込んで、
「おかん今日はフラフラしているから、もう床に入りな」
「そのままベットに潜った」

 以降の記憶がない眠り続けていたようだ。17日いくら待ってもヘルパーさんが来ないので
事務所へ電話を入れた。「うちは今日はお休みです。昨日伺ったでしょう」「ええーっ」
ヘルパーさんから連絡がきた。「あなた何言っているの」
「あなたは昨日うちで何をしてくれたの」「○○*××をしたでしょう」「そうだっわねー」
 
 海馬に異常がきたしたのか、記憶回路の一部が断線したのか。
 来るべきものが到来した。覚悟をしなくてはと今、武者震いしている。
 
 自分にしては長編の50枚の運命の赤い糸を、書き上げた所である。
ところがプリンターの具合か、タブレットの不具合か、うまく印刷できない。
検索して調べているが、やたらと横文字が並ぶ。その横文字をまた調べなくては
ならない。年は争えない。しっかりしているのは「口」だけである。
「もうついてゆけない」諦めムードが全身を包んでいる。

 80年来の友に「あなたはどちらさんですか」と年賀の挨拶を受けて、泣いてしまった。
みんなゆく道だとは、思うけど、現実に起こると、なすすべがない。
 本を読む時間が減った。目が悪いだけではない。吸収する意欲もないし、面白くもないのだ。
振り返ることが多くなって、こうなってしまった。
 理不尽なことがあっても喧嘩もしなし。できない。この頃である。
 
「それは違う」と言えるのは脳の確かなバロメーターである。と思う。
 近ごろ、それがいえない。角の取れた、まあるい老婆になったように見えるだろう。
丸い玉は飴玉だ。金平糖にはとんがりがある。山がなくては金平糖でない。
 私は金平糖でありたい。    見直していてつい追加してしまった。




 天気が良くなったら明日は散歩してみよう。
 ヨットハーバーまで足を伸ばしてみよう。





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