第23話 生かされた道すがら(2)

文字数 528文字

「お古の本は絶対に嫌。自分で買う」言い切った。
誰が買ったか定かでないが、3年生からぴかぴかの教科書。
達筆だった父が、太く大きく名前を書いてくれた。
 自分の名前の入った新しい教科書には、名前以外何の
記憶もないが、複雑な気持ちで今思い出そうとしている。

 よく遊んだ「まっちゃん」の家の人形部屋には人形も
玩具も沢山あった。川向こうから「安子さん、鶴ちゃん」
姉妹も来ていて、いつも四人で遊んだ。
お風呂もおしゃれで誘われるままに時には、入浴させて貰
いその時は夕食もご馳走になった。「まっちゃんく」だけ
は祖母からお許しが出ていたのである。
 提灯をつけておばさんが送ってくれた。因みに「まっちゃん」
はひとりっ子であるり、貰い子であるという噂を聞いた。
 
 三年生の夏休み頃から遊び仲間が変わった。3級も上の子
がいたりして時々、意地悪もされたが、ラムネ玉遊びに夢中
になっていた。勝負をかけて真剣に取り合うのである。心擽
ぐられるほど面白かった。通算するとわたしはきっと負けて
いたのだと思う。私はこの時の後遺症を今も引きずっている
のかも知れない。今も勝負ごとは好きだ。
 
 戦争に明け暮れた時代を生き、生かされた昭和の思い出は
止めどがない。
 季は秋。静かな夜、まるで湧水のように。





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