第125話 ふるさと

文字数 1,050文字

 ふるさとといえば、生まれ育まれた所をふるさとというのだろう。が、
 私にはもう一つふるさとがある。それは、学校の休みのたびに訪ねた。と、
言うより、帰った。最果ての地ほど遠くにあった母の生まれた山里である。
 弟と同級生の従兄弟を従えて三人で山里の祖母の家へ帰ったものである。生家では、
祖母にこき使われたが、この祖母の家ではお客さんさんだった。もちろんいつも銀飯
だったし、さん付けで呼ばれて、別世界だったような気がする。
 跡取りの年の離れた従兄弟は、木こりというか林業に携わっていて、朝の出かけは
早いから朝は見たことがなかった。
 長いこと居候して、明日は帰るという前の夜、白い紙に包んだお小遣いを三人にくれた。
お金に穴が空いていたから、5銭か50銭か?。穴あきのお小遣いをくれるのはこの従兄弟の
おじさんだけである。うれししかったなぁ。
 従兄弟は呉服屋さんから妻を娶った。農家の娘は大なり小なり野良に出て、手つだったけど
呉服屋のお嬢さんは、野良仕事はできなかったが、しなくてもいいと従兄弟が言い切った。
祖母は、従兄弟にまかせて黙っていた。あれはよっぽど、従兄弟が惚れ抜いて貰った嫁さん
だったのだろう。子供心にも夫婦のぬくもりのようなものが伝わってきた。
 祖母の家に着いたら、従兄弟の嫁さんが、すぐ着替えの着物を出してくれた。こんな
綺麗な着物は持っていないし、普段に着るには上等すぎて、落ち着かなかった。
 夏よりも春よりも冬が一番楽しんだというか、思い出を紡いだ。雪に遭遇するからである。
 3級上に従兄弟「y」も居るが、なぜか普段はあまり仲良しではない。私のわがままが、
許せなかったのかもしれないし、祖母の盲愛が面白くなかったのかもしれない。
それは後になって思ったことで、祖母の家では、何もかも許されて、当たり前だった。

 ある年、従兄弟「y」が孟宗竹を割ってスキーを作ってくれた。
小さい山の中の芋畑の傾斜を利用してスキーを楽しんだのだ。
一枚だけ写真があるところを見ると、誰かオブザーバーがいたのだろう。
 
 過日、スキーの話をお小遣いをくれた従兄弟の息子に話したら、その時、僕も見に行って
いて、町(私のこと)の人は妙な遊びをすんもんだと思ったいう。七十年余り昔のことである。
 今日、ふるさとは吹雪いているのかもしれない。山を見ながら心はスキーに、たどり着いた。
 ふるさとはよきかな。明日の夢がなくても、思い出だけで、心和んでいる。

 このスキーの話。いつか、どこかで書いた気がする。重複していたら、ごめんなさい。











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