第101話 彼岸のぼた餅

文字数 510文字

 桜には少し早いがお彼岸に「ササゲのぼた餅」を作るからと
故郷の友から電話があった。
 実家に2本の巨桜がある。池の辺りにある桜は、手入れもせず見る影もない
池の養分を我が物顔に吸い、いよいよ巨桜になって、たぶん村一番の
桜だと、噂されている。その下でお花見をしようと昨年から約束していた。が、
開花には、少し早い。待ちきれずに20日の月曜日にぼた餅を食べにゆく。
 両親や兄たちの墓参を済ませて帰途、友の家へ行くことにした。
 子供たちと会ってまだ1週間しか経っていない。子供に会う前日と、友に会う
前日は、何か心構えが違う。友に会う時は遠足の前日のようだ。ワクワクする。
お互いに歳だから、言わずとも会うは別れの始まりと思っているから、一言一句
大切に語り、心して聞いている。ありがたいことに二人共まだ頭はボケていない。
 この歳まで生きていると、故郷には話せる同級生は一人もいなくなった。
ぼた餅の彼女は2級上級生だったが、成人してから仲良くなり、近年特に近しい。
いつも甘えるのは私の方で、彼女はなんとも言いようのない素敵なお婆さんである。
 明日に夢のあることの楽しさ。だんだん子供に帰ってゆくようである。
 小さい夢は大きく膨らんでいる。



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