第21話 嘘か誠か

文字数 514文字

 淡路阪神大震災の被災者の一人である息子。
人の運命なんてどこで狂い出すかわからない。

80婆さんと独身の50男が世間の片隅でひっそりと
暮らしている。聞いただけで、うら寂しい。
当事者となればなおさらである。

どうぞ息子に伴侶が出来ますようにと、一縷の望みを
神仏に託した。しかし、神も仏も知らんぷりだった。
私も諦めた。兎に角息子を帰郷させ、就職も果たした。
が一向に彼女が見つかった様子はない。

 私は、結婚相談所へ申し込んだ。
写真付きの一覧を見せてくれた。2〜3名、名指しで聞くと、
今、先約があり進行中という。履歴も写真も人寄せだ。それ
なら、最初から人の気を引くな。見せるなと声を大にしたい。 
見合いは、決められた場所へ5分前に行き、卓の上に白い
ハンカチを置いて待つ。のが決まりという。

 そんなこと息子はしないだろう。結局一度も見合するこ
とはなかった。年会費6万円なりは捨て銭だった。
その上、退会届を出さないと次年度の会費を徴収すると言う。
黙って急いで退会した。世の中知らないことが山ほどある。
入会も退会も息子の知らぬ間の出来事だった。
 
 新聞に紹介所の広告が載るが、私は、皆同じに見える。
 同じ目にあってる人が何人いるだろうと危惧する。










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