第80話 手術するか(2)

文字数 560文字

「付き添いの方も入ってください」
「付き添いはいません」
「ええっ、それでは、まず説明しましょう」
「脊髄に麻酔をして半身を麻痺させて執刀するが、なにぶんご高齢なので
脊髄に麻酔ができるかどうか?」
「そんなら全身麻酔でするのですか」
「なにぶんご高齢でリスクが大きいので私は手術をお勧めできません。今まで
30年も我慢してきたのに、どうして今になって切除したいのですか?どうしても
と仰るのなら、高いリスクを覚悟していただいたらお受けします。
 いぼ痔では命に関わらない。と医師はやんわり断ったと理解した。
「帰ってよく相談してみます」
  医師は差し障りのない言葉で、いとも簡単に言ったけど、考えてみれば、
高いリスクということは、命をかけることと受け止めた。
せっかくのこの命、この痔にはかけられない。相談には及ばないので娘に
「手術はもうやめーた」とLINEしておいた。

 膝の手術をして9月で、5年になる。そうだあの時も医師は
「今なら右膝も一緒に手術できるけど、来年になったら執刀する自信がないのでは、
ないかと案ずる」と言った。
その言葉がずっと胸につかえていたが、今解けた。
問題は、高齢と高いリスクの比例だったのだ。
 9月の診察の時この話をしよう。クソ真面目そうな医師はどんな顔をするだろう。
 両膝同時に執刀した疑問が解けて心は晴天である。







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