第46話 膝、ひざ、ヒザ

文字数 564文字

 富士山の砂走りの下山の時はすでに膝が
痛かったから、かれこれ40年膝の痛みとつき合っている。
県内のいいという病院、整形外科、整骨院、保険の利かない
魔術師のところにも行ったが、歳と共にだんだん悪くなるばかり。

 4年半にもなるか、最後の手段として手術をした。
予診の時長男と行っておれば、彼は慎重だから、こんなことには
ならなかっただろうけど、予診の付き人は次男だった。

「お年も大きいし来年片足出来るか自信ありません」
「今年なら両足一緒に手術できますか」
「はいお元気だし今ならできます」
「おかん嫌なことがいっぺんで済む。やってしまおう」
「そうやなあ。そうと決まれば早くしよう」
親も親なら、子も子。

 両足同時とは痛さも2乗だった。
リハビリして2カ月で退院したが、左は経過良好だが
右は、術後から芳しくない「芳しくない」と言うと
先生が悲しそうな顔をする。悲しそうな顔は見たくない。
「大丈夫よ、じゃあ又来年見せてね」
「生きとったら来年またきます」

 膝痛で命を落とすことはないだろうけど
足が曲がらないということは何と不便なことか。
走ることも、拭き掃除も、階段も、段差もままならない。

 世の中には、不便や不自由の言葉で表せない辛い人が沢山いる。
 自分の足で歩けるだけでありがたい。
 話せるだけでありがたい。
 この膝は大事なことを思い出させてくれる。




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