第5話 生命

文字数 435文字

 昭和三十六年女の子を出産。
難産だった。破水後すでに十時間が経過。
このままでは、やばいと鉗子分娩。

新生児は四十二度の高熱が三日も続く。

解熱の注射を打ちまくった。
最後の手段と小さな胸に針を刺した。

五日後に胸の注射液が固まって
ぽっくり穴が開いた。

 熱が収まり生命はつないだ。
何が悪かったのか、よかったのか
わからない。
 食の細い弱い子に育った。
長生きできないだろうと、案じた。
過保護に、わがままになる。

 三年生の時、スポーツを始めた。
 父親が、底辺の狭いスポーツを選んだ。
水泳。それも高飛び込みである。
 ところが、どうあろう。全中では日本三位。
元気になったら、急に育て方は厳しくなった。

父と娘に大きな夢が芽生えた。
それはオリンピック?

インターハイの途中でドクターストップ
 赤児の時の胸に開いた穴の後遺だ。
水を切って水中に入る瞬間の圧迫が悪いと 
飛び込みは諦めた。辞めざるを得なかった。
 今は一級建築士として、バリバリ男性並みの
仕事をこなしている。
 生命のふしぎ。運命の不思議。
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