第42話 遠足とセーター

文字数 539文字

 大戦中でも遠足はあった。
自分の遠足のことを思い出し、そうだ弟にもなにか
作ってやろう。3年生から家庭科の時間があった。
私は好きで面白かった。
セーターを編もう。と思いついた。

 半袖のセーターがあったが着る期間が限られていた。
幾つも穴の空いた大人のチョッキと半袖のセーターを解いた。
曽祖母に手伝って貰って枷にして洗った。見様見真似でねずみ色
に染めた。
 新聞紙に今着ている服をうつし切り取り、実物大の型紙を作
った。それは襟が丸く開き左右に手が出ているだけの型紙である。

 表あみと裏編しか編み方は知らない。
5センチのゴム網に1カ月かかった。あとは推して知るべしである。
前身ごろと後ろ身ごろをうまく繋げず、つなぎ目が筋になった。
教えてくれる人も、聞く人も居ないから、仕方がなかった。それでも
二目一度、伏せ目を発見して、1年がかりで編み上げた。

 遠足の朝、私の心は浮いていた。町の子のようになるから短パン
を履かせようとしたが、カッコが悪いと長ズボンだったが、

 組で一番弟がカッコ良かった。姉の感情でなく母性の心情かも。
ようやったなあと誰も褒めてはくれなかった。母親のない子は
いつもそんなもんだ。私は4年生。自己満足しただけだった。
 思い出しては、よくやったなあと、おかっぱの頭を撫でている。

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