第27話 世捨て人に誰がなりたい

文字数 648文字

A「やめたらこんなに幸せ」と読者の手紙に掲載。
年金暮らしになって久しいので、お付き合いを縮小して
年賀状もやめた。己は似合う生活をしたら
己に似合った幸せを感じると報じた。

 Bそれは世捨て人になっているだけだ。
私は世捨て人にはなりたくない。と反論した。

 私はBに反論する。
世捨て人に誰がなりたい。なりたくてなっているのではない。
十人十色で、限られた年金は目減。歳を重ねると足腰も脳も
精神も萎んでゆく。そこへ老後資金2千万円の話題が起きた。

 20年も昔の式服を着て、お印だけの、のし袋を持って
「おめでとうございます」と結婚式に出席できますか。葬儀
も同じ焼香に立った途端、「アイタタ」と座り込んだり、転んで
骨折。転んだら年寄りは骨折すると決まっている。

 知人が、愛犬(金食い虫)への出費は知恵を絞っている。
と言う。その通りだろう。

 冠婚葬祭もお歳暮、お中元もない袖は振れません。賀状も
同じく、目はおぼろ、その上、手が震えて思う様に字が書けない。
 
 人は人、我は我。我が身に合わせた生き方を多くの年寄り
はしているのでないかと思う。

 「世捨て人」に誰がした。なりたくてなっているのではない。
成り下がりでも、命ある限り来世の扉が開くまでは
生きなくてはならない。

 九十歳。何がめでたい。何が楽しい。それでも子供の
生活を脅かしてはいけない。お荷物にはなりたくない心情。

 63歳のAには理解できないだろう。63歳は若いのう。
弱者にならなければ、弱者のことは理解できまい。
 弱者になった時、初めて諸行無常を知るだろう。






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