第82話 俺も見ていたよ

文字数 550文字

 第2の故郷と自認している祖母の眠る神山へ墓参に行った。
家は従兄弟の息子Yがしっかり後継している。過疎化は当たり前
になったが、古風だが家も墓も守られていて、ありがたい。
私たちを見守ってくれた祖母の墓は家の近くで少し小高い丘の上にあり
小径にも季節の花が咲き、私は公園墓地だと呼んでいる。 
 
  私は雪女。
 その墓地でYに「あの西山の芋畑でスキーをしたげど、あんなに狭かったのかなぁ」
「それは違うあの小さい峠の向こうにもっと広い畑がある。スキーをしたのはその畑だ
その時、俺も見ていたよ」
「ええー、覚えているの」
「小さかったけど珍しかったからよく覚えている」

 その昔、芋畑でスキーをしたなんて、誰も信じない。
有頂天になるほど嬉しく、帰って早速昔を紐解いた。スキーといっても、
太い竹をわり加工した手製。積雪の中、ほんとにスキーをしている従兄弟と私の写真が
一枚あった。写真を撮ったということは、他にだれか大人も来ていたのだろう。
 
 Yは70歳。小さかったというYから逆算すれば、あれから60数年過ぎたことになる。
「あの頃はよく雪が降っていたなぁ」Yとの会話を思い出している。

  雪が無性に好きなのも、雪女と自称するのものも、小さい時からに通い詰めた
 第2の故郷、神山に私と雪の原点はあったのだと知った。信じた。






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