第97話 ふるさと

文字数 548文字

 日本列島雪に難儀しているニュースが今日も流れている。
雪が好きで降雪を待っていたが、ここは南国、雪は舞はない。
雪国の方達に申し訳なくて、声を大にして、雪好きとはいえない。
風は冷たいが、山懐に入ると冬の陽とも思えない暖かい陽を浴びた。
ふるさとの家は屋敷まで蔦が伸びて竹が蔓延り、納屋まで覆い被せ
ていた。見かねた弟は業者を雇い手入れをしてもらっている。
久しぶりに故郷を訪ねた。西の離れも浮かび上がった。東の棟も世に
躍り出た。遠くから見ても、昔のふるさとがそこに活きてきた。
残念なのは、大きな鯉の泳いでいた池が潰れて小さくなり、
もうメダカも生息していないだろう。
兄があんなに綺麗にして、鯉を放っていたのに……ああ無常なり。
池を背景にして兄の植えた枝垂れ桜が二本。もう30年になるらしいが
巨木になっていて、村一番の綺麗な桜だという。
私の友は今年の花見は、我がふるさとの桜だという。私も元気を出して
その頃には桜の下などきれいに履いておこう。
 ふるさとへ来て、風車を見るとそこに兄が重なる。
天気の良い日は、侘び住まいのマンションから風車を見ることができていたが
目が悪くなったのであろう。風車が消えてしまった。

ふるさとの庭の端からローバイを切って帰った。三分咲きだ。
しばらく、ふるさとを楽しむことが出るだろう。





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