第33話 いじめ(1)

文字数 781文字

 小学5年の春から私はいじめられ始めた。
第2次世界大戦真っ最中の、小さな寒村の名もない学校の
些細な出来事である。
 東西に長い村には、尋常高等小学校が3校あった。
1〜2年生のときは、共学で、3〜4年の時は、男子と女子に
分れていた。その頃、高等科の生徒に今でいう、アイドル扱い
され、恥ずかしい思いをしたものだ。
 4年生になって尋常高等小学校から国民学校初等科に名称が
変わった。1年後、高等科の嫌な上級生も卒業した。

 晴れ晴れと迎えた5年生ではまた共学になった。
いじめる方にも、いじめられる方にもそれなりの理由はある。
両成敗の綱引きする人はどこにもいない。所詮孤独なのだ。

 男子は、女子より偉いもの、強いもの。
 女子は、男子より弱いもの、すぐ泣く者。女は従順な者という
既成観念から見たら、私は破天荒な女生徒だったようだ。

 4人兄弟の中に女一人で育てられ、母親を知らない私は物心
ついた頃から、自分のことは自分でする荒削りな、何とも可愛
気のない子であった。子供のくせに負けん気で生きていたようだ。

 この年頃は、男子よりも女子の方が、少々勉学の方も良かったかも
と思う。3年目の共学に、男子は、あたふたとしたのは確かなようだ。
いつの間にか私は、4〜5人の男子の目の上のたんこぶになっていった。

 戦争一色の銃後は食べるだけで精一杯。娯楽など論外であった。
折り悪く、父の女性問題が大人の間で浮上した。巷の噂を聞きかじった
男子は、ここぞとばかり、私に集中砲火を浴びせてきた。
問題の女性に4〜5歳の女の子がいた。その子に教えて私の妹と
いわせるのである。何という陰険なことか。
「阿呆言え違うらわ」私の泣くのを待っている男達。どうして私は泣かない。
私をやり込めることで溜飲を下げていたのだろう。 繰り返す下校時の暴言に、
とうとう堪忍袋の尾が切れた。
 今はこれまでと真っ向から喧嘩を挑んだ。


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