第89話  洗濯機と思い出の昭和

文字数 536文字

 スイッチ一つで洗濯ができるようになった。
その上、乾燥まで出来て、畳んだらよいだけになった。しかし、
5枚や6枚を乾燥までしてもらわなくてもよい。天気の良い日に
窓辺で乾している。陽をたっぷり受けた衣類は、暖かく
太陽の匂いがする。タオルを畳む時の感覚は得がたい。

 衣食住のすべてが目まぐるしく変わり進化した。
時々、思うのだが、何の普及よりも私は洗濯機が世に出たことが
1番嬉しい。紅い手袋で綴ったように洗濯が最も辛かったから。

 炊飯器の普及もありがたいが、釜屋という独立した土間に大、中、小の
かまどが並んでいて、隅の箱の中に薪を置いてあった。箱の外には割木
(今もテレビに出て来る太い木を縦に割ったもの)を備えてあった。
火打ち石は明治の道具で、昭和にはマッチがあった。マッチで枯葉に火
をつけたり、たいまつにつけたりした。後は細い薪に火を移す。焔ので
具合で割り木を加えて燃やす。焔の色も木のバチパチはぜる昔も好きだった。
「始めチョロチョロ中パッパ」で沸き立ったら、火力をかげんする。
言葉では、火加減の様子をうまく言えないが、子供なりの勘で炊飯した。
寒い時には程よい暖がとれた。また芋、栗、トウモロコシは長い火箸に
刺して、残り火で上手に焼いて食べた。
 80年も昔の宝のような話である。



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