第20話 蟻の生涯

文字数 355文字

 引っ越しの時花の鉢を幾つか持ってきた。
日当たりのよいベランダでご機嫌に育っている。
ベゴニアの鉢を部屋の机の上に置いた。
「ベゴニアの落ちる音聞く夜のしじま」です。
 
暇にあかせて鉢を見ていると小さい蟻が2匹
回遊している。遊んでいる場合ではない。仲間を
捜しているのだろう。

 今までなら、すぐ殺虫剤をシュッとやるのだが、
同病、愛憐れむか?シュッとやれない。蟻の孤独
が身に染みたのだ。

 鉢を急いでベランダへ出してやった。そこには4〜5鉢が
あるから、せめて蟻の仲間のいる可能性のある世界へ近づ
けてやろう。と。この蟻たち、どうあがいてもこの世界から
脱出はできないだろう。
 いや、それは杞憂というものかもしれない。蟻には斥候が
いる。蟻の行列を思い出した。

 あの小さい蟻の生涯や命のことを考えている自分
の心の綾に驚いている。

 



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