第52話 ポパイの家

文字数 699文字

 「そっちやない。こっちや」と題した
福祉ドキュメンタリー映画を観賞した。1982年愛知県知多市の
療育グループの記録映画で監督は柳沢寿男氏。
上映に先駆けて当時、指導員として勤めていた青年「杉浦良」さんが、
解説と裏話などお話になった。映像から推すと、お歳を重ねられて、
お髪も白くなっていた。ずっと福祉畠におられた由、ご苦労が偲ばれた。

 バラバラに暮らしていた障害者たちが公民館に集まり内職をするうちに、
自分たちの作業所が欲しいと思うようりなり、実現に向けてそれぞれの持つ
力を発揮してゆく。
 障害者と言っても最重度から軽度、知的と身体と、重複障碍とさまざま。
そのメンバー達が集まって「空想設計図」を作るシーンがあり、印象に残った。

 自分達の手で自分達の仕事場を作るために、良さんがみんなの意見を図面に
書き込んでゆく。意見を聞かれることも初めてだし、発言することも初めてという
人もいた。自分の考えが生かされる。嘘のようなほんとの話だった。

 素人設計図は出来上がった。あとは専門家に委ねて完成した。
やがて図面に基づいて作業は進行していった。その道のボランティアの協力無くして
はなしえなかった作業であった。
不要物の撤去、続いて土工の仕事と、それぞれが「分」にあった作業を懸命にこなす。
見ていて流している汗に、心は熱くなった。

 2年の歳月をかけて改装し終えた作業所を「ポパイの家」名付けた。
「やったらやれるんだ」弾ける笑顔。見たこともない自信に輝くへ瞳
に出合って、感動を新たにした。

 「ポパイの家」で働いて稼いだお給料だ「嬉しいなー」
 みんなのあの笑顔が忘れられない。
 心、揺さぶられる映画の余韻は夜まで続いた。









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