第112話 出合い と別れ

文字数 574文字

 ある遊びの会は、昔、大富豪とか、貧民とかいって遊んでいたが、人権問題も絡んで
世の顰蹙を買い、消滅した。しかし、その流れを汲む別派が存在して今も楽しんでいる。
 次に2回、会を開いていたが主催の女史の健康が優れず、今は月に1回開催している。
会員は8名、毎回誰かが休むから頭数は丁度良くなる。会則はないがお菓子当番が8か月
に一回ってくる。お茶や接待は専ら女史におんぶに抱っこしている。皆んな気にはしてい
るが、パーキングや空き部屋のことを考えると候補者が現れない。
 第2月曜日の13時開場。今日は5人であった。一番高齢のHさんが膝が痛くて欠席。
誰も言葉にはしないが、これで退会だと思っている。数年前、県で輝いた女性十人の筆頭
に名を馳せた方だったが、今年は齢93。昨年は新車に乗り換えてやる気満々だったが、
年には勝てん。人生の目標として尊敬していたので、今日は遊びどころではない。
すっかり落ち込んでいる。その上、私はこの会の最年長者になってしまった。

 遊びは静かに始まったが、やがて笑いになり、爆笑。皆んな1月分笑ったとまた笑う。
そうだ。今日は誰もマスクをしていなかった。

 私は女史の家に傘を忘れた。タクシーの中で思い出したが引き返さなかった。
タクシー代の上乗せはなかったがさて、どうして取りに行く気だろう。
  
 こういう、間抜けたことは日常茶飯事である。



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