第47話 落ち着いた風合いの御堂 安禅寺4

文字数 774文字

 まだ新しい霊を祭る建物だった。ドアーを開けると、正面には白い牡丹の花を描いた
日本画が目に入る。来訪者に安らぎの気持ちを与えてくれる。「檀家様の知り合いの女
性に描いた頂きました。美大を出た方です」という。私が描く素人の絵とは違うプロの
表現である。見せる日本画は50号くらいある。
 天井を見ると、市松模様のカラフルな30cm角の物が配置してある。「暗いイメー
ジにならないよう、落ち着いた風合いのデザインにしました。色の配列もばらばらにす
ると不安な感じになるので、前と真ん中後ろは、近い色のオレンジ・ピンク・薄紫・黄
色などを配列しました」と説明する。
 デザイナーは金がかかるので、研究し住職が決めたという。部屋の中も、三面の壁の
上部に天女が緩やかに宙に舞う様子が何体も描いてある。これは別の檀家の縁者が描い
てくれたものだという。
 祭壇は上段に落ち着いた色の位牌があり、傍に花や写真が飾られ、下段の扉の奥には
遺骨の安置となっている。幅45cm位の1家族単位の室内墓である。
 最近のお寺ではこの納骨堂が建築されている。これを建てる場合、建築許可はいるが、
近所の家の承諾がなければ建てられないという。
 「建築費用も高額になり、銀行もなかなか寺の収入を勘案し融資をしてくれない。納
骨を希望する遺族を募集し、費用を調達させてもらったら」と考えた。日頃の縁もあっ
てか、またたく間まに所定の金額を集め、この場所に建てることができた。
 地震にも耐えるよう、頑丈な鉄筋コンクリートの厚い壁を優しい壁材で仕上げている。
故人を拝みに来た人が、安心しゆったりできるよう、建物の前面にはテラスがあり、テー
ブルに椅子が何人分も準備してある。
 高台からの瀬戸の街並みの眺め、近くの低い山並みが、心を和やかにしてくれる。
建物の中にある仏像にも、ひとつの物語があった。
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