第18話 久留米梅林寺の雲水さん

文字数 853文字

旦過とは雲水を1日泊める所の意味という。雲水の修行は臨済宗では特に厳しいらしい。
 彼岸に久留米梅林寺へお墓参りに行った。禅の専門道場であり雲水6人を抱え師家とい
う老師の元で3年半修業をする。境内は整然と清掃され、墓の筒には榊が飾られている。
 お墓の底から「この寺の雲水さんは厳しい修業をされているぞ」とご先祖様の声がする。 「どんな生活ですか?」と尋ねると「仏教の戒律を守り12月には蝋八という1週間寝ずに  坐禅をする。逃げ出す者もいるぞ」話を聴き「私にはとても耐えられません」と反省した。
 起床は3時半。本堂での読経の後、禅堂での坐禅が始まる。途中、雲水は一人ずつ師家
の部屋に行き、公案の回答を提示する。内容を雲水に訊ねると「片手で音を出すにはどうす  るか師家に問われた。毎日答を提示するが老師から違う。深く考えろ!と叱られる。正解
するのに2ヵ月掛りました」と言う。疑問によって悟りを求める看話禅 というらしい。
 「食事も修業のうちで、朝はお粥と漬物のみです」「昼は、米入り麦飯と庭で採れた野菜
を煮たり炒めたりし、それに味噌汁です」一汁一菜とはいえ極端過ぎると思った。「夜は本
来、食事なしですが、掃除や草刈りの労働も多く体を維持する為、昼の残り物を食べます」
と云う。雲水達はそれ程、痩せてはいない。「毎日たったそれだけ?」と驚くと、継ぎ接ぎ
作務衣の若者は「御椀に大盛3杯までお代わりができます」と二コリと笑う。
 老師も同じものを食べ、法要での法衣姿は凛として頭や顔は艶々している。葬儀の時、雲
水にミスがあり老師が叱責の「喝」をいれ我々も威厳のある気合いどきっとさせられた。
 総務の納所 が黒布から御椀2個と蓋3個箸に匙を出した。「食事が終わると茶を椀に注ぎ
清め、飲み干し袱紗に仕舞うのです」法要時の食事だけ、雲水は全て食ても許されるらしい。
日頃、美味しいものは食べないのだろうと、施主の出すステーキや刺身を見事に平らげる。
住職になる為、この辛酸な菜食主義を3年半経験しないと、寺の跡を継げないと云う。
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