第98話 児島デニムストリート ブルートリック

文字数 1,173文字

由加山の近くは、山を下れば児島の町はすぐである。ジーンズで有名になった所で、コロナ前は海外からのお客も随分来られ、商品を買って帰られたという。話しには聞くが、何処かにあるのだろうか”ジーンズの記念館”の場所も分からない。ナビで”ジーンズ・ストリート”というのがあり、設定し目的地に向かった。ナビは細い道を誘導し、遂には車が、少し擦りそうな所なので、諦めて、バックし本通りに戻った。「車の中からちらっとジーンズとかの看板が見えた」と、同乗者が言う。児島公民館の駐車場があったので、車を止め歩いて探索することにした。天気もよく、行楽には良い季節だ。今日は休日明けの月曜日なので、通りの方はシャッターが閉まっている店が多い。近くは児島湾で瀬戸大橋の橋脚も見えた。看板が見つかり、ストリートを歩く。確かにジーンズのショップが並んで居る。個人商店のような感じで、閑散として人通りもない。土日には大勢の観光客もいたのだろう。本日休業の看板の中、偶に開いている店もある。個人店で、中に入るのに、躊躇する。買う当てもない冷やかし客の負い目があるのだろうか。何かミュージアムでもあるのかなと、倉敷の盛大な町並みを見て、勝手に児島ジーンズを連想した。ここは学生服の縫製で昔から有名だった。通りの両サイドの電信柱くらいの高さにロープを張り、古いジーパンを10本位ぶら下げていたのが何カ所かあった。ジーンズはデニムで作ったズボンの事をいい、米国では綿栽培をし作業ズボン用としていた。日本でジーンズを初めて作ったのが、この倉敷市児島である。インディゴという化学染料を用い綾織りで作る物がジーンズだという。インディゴは青色染料のことをいうらしい。ウインドウも広く、洒落たジーンズの上着や外套や帽子などが陳列してある店に入った。優しそうな若い女性が、商品の説明をする。有限会社ミズタニで「ブルートリック」という店名だ。岡山井原市に工房があり、熟練職人が手作りしているという。藍色の生地に薄い藍が模様を織り込んでいる。連れが外套を羽織った、センスも今風で、それ程重くはない。気に入りそうだったが、家にも同じような外套をもっており、やめた。私は展示されたベストが濃紺でシックな感じ、手作り感も良さそうなので、試着した。連れも、「良いじゃない」と言う。出会いはなかなか無い、気に入ったので買った。裏地はイエローオーチャドで薄青の線がはいっている。綿100%で手触りのざらざら感が良い。児島でなければ手に入らない良い物をゲットした。ブルートリックの製品はジーンズではないという。化学繊維を使わず藍色の草木染めである点が違う。綾織り機を使わないで生地を織る点も違う。見た目はジーンズと同じような感じである。洗濯すると藍色の風合いが違ってくるという made in japan である。
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