第34話 「多良海道を往く」の製作者との奇遇

文字数 797文字

 大魚神社の裏の通りが多良海道のようだ。斜向かいに円教寺というお寺がある。
傍にソテツの樹がある所が上使屋だったらしいが見つからなかった。
 事前にネットの情報から簡単な写真や説明文をコピーし持ってきた。断片的でど
こにあるのか見つけるのには、一苦労だが楽しくもある。
 人は居ないがこの道は間違いなく宿場である。細い道の両側に古そうな民家が
並ぶ。玄関から出てきて、別棟に行こうとした男性に「この前の道が海道ですか」
と声をかけた。
「多良海道の冊子を持ってないですか」と問われた。「見たことありますが持って
ません」と言うと「ちょっと待って下さい」と家の中へ戻り、奥さんに話かけた。
 A4版のパンフレット5枚持ってきて「これを上げます」という。「多良海道を
往く」という写真の綺麗なパンフレットで地図と説明文と写真で纏められている。
先ほど見た海中鳥居に大魚神社に幸せの鐘までが載せてある。
 これから行く竹崎と湯江もそれぞれ見開きの紙に細かく印刷されている。このパ
ンフレットトに見覚えがあった。浜宿の案内所で諫早から多良の案内が詳しく書い
てあり貰って居た。自宅に保管している。
 男性は説明を始めた。「私は太良役場勤めで、郷土の歴史を冊子に作る仕事に
携わっていた。諫早市と太良町で郷土の宣伝になるような資料を国から補助金を
もらって作る仕事です」。64歳の多良町役場の課長をしていた男性だった。
 この冊子の製作に係わった本人の家の前で偶然お会いするとは、人生何が赤い糸
で繋がっているか分らない。
 現在のネット社会では、繋がっている赤い糸や黒い糸が滅茶苦茶多いのかも知れ
ない。赤い良い糸が多いほうが嬉しい。
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