第51話  後藤寺駅前の八女茶の今村茶舗 秋月街道

文字数 1,209文字

秋月街道の大隈宿を目指していると、後藤寺駅近くを通った。子供の頃から聞いていた駅
一度は寄ってみようと思った。かつては石炭の町で賑わい、各方面への連絡駅になっている。
 商店街はシャターがおり入口の御茶屋さんが開いていた。お客が帰ったので、体格のいい
店主に「随分古くからお茶を販売されているのでしょうね」と尋ねると、小一時間、お茶の話
しをしてくれた。
 「5月に新茶が出回りますが、熟成され本当においしいのは11月頃」と言う。今村茶舗は
明治28年創業で主人は4代目跡継ぎである。
 「日本には栄西が中国から茶ノ木を持ち帰った。嬉野にその石碑がある。それから京都へ
広がった。中国は薬としていたが、日本流に洗礼されたお茶になった。高貴な人が嗜んだ。
緑葉であるが酸化すると茶色になるのでお茶という」。
 伝統の話を聞きいていると「お茶を入れましょうか」と言う。ちょうど喉が渇いて飲みたか
った。
まずは1杯目、八女茶の千円もの、香り良く熱さも飲み心地がよい。小ぶり茶碗ですぐ飲み干
す。茶は80度くらいで、小さじ2杯の葉でお湯は小さな湯呑で入れる。
2杯目も濃い緑茶で美味しい。「お茶の味は甘さ、砂糖の甘さではなく、優しい味である」。
3杯目は少し熱めで、茶を味わえる。「本当のお茶は3杯目まで飲める茶が本物」と匠は語る。
 「祖父や父から子供の頃から茶を入れてもらい飲んだ。知識の数々も伝授してもらった」
「飲んで、お茶がいくらの値段、どこの産地、静岡、京都、八女、鹿児島を当てることが出来る」
「生協がほしの村の茶を100g800円で販売した。3000円する高級品なのにと疑問に
思った」原産茶が50%以上あれば、安い茶を混ぜてもよいらしい。「星野の高級茶に安い鹿
児島茶を混ぜていたらしい」
 安い茶を買って、大衆は騙される。1杯目は美味しいが、2杯目は不味いお茶が多い。「お
茶は1杯目、2杯目、3杯目迄飲めるのが純粋のお茶」と匠は念を押す。
 家で買うお茶は1杯目は美味しいが、2杯目は不味いので捨てている。匠は強調する「安い
お茶にアミノ酸を混ぜる。味は良くなるが1杯目でアミノ酸が溶けて、2杯目は不味いお茶に
なる」まさに思い当たる節があった。不味いお茶のアミノ酸入りを買って満足していたのだ。
 八女茶販売の今村茶舗のガラスケースの葉から100g買った。私の近くにこんな純粋な茶
販売が無い。どうしようと悩む。
 「妻は日本茶のインストラクターの免許を取った。筆記は1回で受かったが、効き茶で2回
落ち、3回目で受かった。効き茶は難しい」。「茶の業者が私にも免許取ったらというが、市川団十郎に歌舞伎の試験を受けないか」と同じことだと返答した」という。
 自販売の茶はビタミンⅭが入って茶色にならないようにしてある。道理で自販機のお茶は不味
い。しかし、しばしば買っている。便利な物は旨さに勝るものがあるのだろうか。
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