第26話 宗像神社 天照大神の三女神

文字数 991文字

 自宅から30キロ離れた所にある宗像大社があり、ユネスコの世界文化遺産
に登録されている。年始のときには、参拝することもあったが、古きよき時代
のことはほとんど気にもしなかった。
 歴史は遡り5世紀ごろ、彼の地に宗像一族が居住、大島・沖ノ島周辺を漁場
とし海人と呼ばれていた。奴山古墳には宗像氏の前方後円墳や円墳があり、当
時の栄華をしのばせている。大島や沖ノ島を経由して朝鮮半島や中国への渡航
も生業としていた。大和朝廷の役人たちは海人の船で大陸へ渡り、多くの文化
を学び日本に導入してきた。
 宝物院で展示されている中国から送られた金の指輪は「言わず持ち帰らず」
の掟のある沖津宮の祭事跡から発掘された。1500年の時を経ても黄金色に
燦然と輝いている。当時使っていた船は原始的なものだった。展示館には木造
の平船に16人の漕ぎ手がいる模型が飾ってあった。神湊から朝鮮半島までは
120キロの距離がある。穏やかな海であっても12時間以上かかる危険な航
海のようだ。遭難も多く、荒れた海を恐れ、神に祈りを捧げたのだろう。
 古事記には「天照大神が三女神に神勅をくだし、田心姫は沖ノ島の沖津宮、
たぎつ姫は大島の中津宮、市杵島姫は宗像田島の辺津宮で地域の子孫を守るよ
うに」という記述がある。辺津宮の奥へは私も行ったことがなかったが、石段
を100段ほど登った所に高宮祭場がある。途中の石段で重そうなトランクを
抱え登っている男性がいた。横浜から旅行し、ついでに世界遺産の見学にきた
という。石の祭祀場では1500年もの間、毎日神主が祈祷を続けている。
巨石の周りを巨木が囲み、木漏れ日はパワースポットを感じさせた。人は神様
がいることを信じ崇め、航海の無事と人々の安寧を祈る。
 古きよき時代のものが今も尚、宗像大社には脈々と続き栄えている。私は神
勅の額に向かって賽銭を奮発し「これも三女神の御陰であります」と深々と頭
を下げ、拍手を打った。
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