第74話 椎田宿の丸金旅館 中津街道

文字数 792文字

 椎田宿の通りに丸金旅館の看板があり、造りは古く、かつての旅籠の風情である。家は3間の間口と狭いが、奥へは2階屋根が続く。隣地が更地であり、旅館の赤茶けたトタン壁で奥行きが分かる。4軒分の長さで高低の屋根が連なっている。中津街道から国道10号線迄家は続いている。
 中津街道沿いの玄関はもう使用してないようだが、シャターの一部が空いている。中に入って声を掛けるが 返事がない。土間は奥の方へくねくねと続いている。更に進むと、間仕切りの向こうで作業をしている気配がする。奥まで入り込むと、高齢の男性が壁側の調理台で揚げ物をしていた。
 「突然済みません宿場に興味がありまして」と自己紹介すると愛想よく、揚げ物をしながら応対してくれた。換気扇がぶんぶん廻り、天井から、今時珍しいハエトリガミが何本もぶら下がっている。「昔旅館を手広くやっていたが今は仕出しの料理だけ。10年前までは地元の宴会などを国道沿い玄関の建物でやっていた」という。玄関と宴会場は古そうだが、使えそうな状態である。
 2階部分が客室で1階は調理場や住居部分や昔の生活を思わせる造りだ。「どうぞ奥まで行って見てください、国道まで出ますので」と御主人は言い、調理を続ける。
 家の真ん中を細い土間が続き部屋が独立して、物置や材料やら仕込場やらが混在している。直線的迷路のような不思議な旅館である。国道側から中へ車3台が入れる広さもある。いまだ一部現役で使われているが「家を維持していくのは大変だけど、頑張ってやっていきます」と仰っていた。
 椎田宿はいまだに製麺や・仕出し屋・魚屋・苗やさんがまだ商売をされている。近くは漁港であり、海上と陸上の要塞地として、昔は栄えて賑やかだったようだ。
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