第14話  内野宿 飯塚の飛び地 長崎街道

文字数 809文字

 国道200号を冷水峠に向かう手前に、飯塚市の飛び地である内野町がある。車を降り、左方
向に坂道を歩くと、突き当りに嘉穂高校美術部の生徒が描いた内野宿の大看板がある。
 日本一の槍を飲みとった母里但馬が建設に当たった。200号から少し外れており、江戸時
代そのままの道が残り宿場の面影をとどめている。西構口(山家宿側)から東構口(飯塚宿側)まで600mあり、その中央で脇道を行くと本陣の御茶屋があった。
 現在、新型コロナで三密禁止の緊急事態の時期で肥前屋旅籠の展示館は休館であり人通り
もない。殿様以外でも泊まれる脇本陣の長崎屋は休館だったが、木戸が開いていたので庭に
入りガラス戸越しに内部を拝見させてもらった。
 シーボルトが立寄ったとの伝承があり、長崎出島の商館長キャピタンと共に江戸へ武士に守
られながら行進している図が見えた。木戸を出ると宿場の道を、不思議な雰囲気の中年の女
性が通り過ぎて行った。
 内野宿の先祖の人達は、本陣の殿様の行列や、はた又多くの有名人が通り過ぎ宿泊してい
く様を子孫に伝承していった。山家宿から難所の冷水峠を越え内野に泊まり、翌日は4里先
の飯塚宿をめざし歩き続けて行く、今では気が遠くなるような話である。
 しかし歩くということは、色々なものをじっくり観察できる。周囲は里山に囲まれ、田んぼ
にはレンゲソウが爽やかな春の景色を繰り広げている。ずっと昔の似たような景色だったこと
だろう。
 2時間後、帰路を車で走ていると、歩道を歩く一人の中年女性が目に留まった。スカート
を履き少しお洒落してるが、肩の前後に荷物をぶら下げ、鼻歌を歌い楽しそうに歩いてくる。
内野宿ですれ違った女性だった。片道5キロはある国道沿いのスーパーへ歩いて買い物に出
かけ、徒歩での帰り道なのだろうか。
 江戸時代の商家の方が、一里歩いて食料品を仕入れ、また戻るという生活をされていたで
あろう内野宿の映画の1シーンを見ているような思いがした。
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