第32話 多良駅の幸せな鐘 多良海道

文字数 749文字

 行ったことのない多良宿の近辺を写真で見る。実際はどんなところだろうか、想像は
限られ、静寂な瞬間の景色を思い浮かべる。
 ナビを多良駅に設定し出発した。高速道路の武雄インターを降り、一般道を走り3時
間の場所である。途中、長崎街道沿いの宿場を通り過ぎる
 六角川の橋から、「鳴瀬宿」の鳴瀬味噌工場の看板が見える。元気な跡取り娘さんが
リフトを運転しているだろう。「塩田宿」の傍も走る。川に突き出した、明治時代の鉄
のクレーンの遺物が見える。下村家住宅もある。一度来ただけだが「懐かしい」。
 「多良岳オレンジ海道」の看板があった。本来有明海沿いの国道を「浜宿」の傍を走
るのだが、初めての近道を走ってみた。
 火山であった多良岳は放射線状に幾重も谷が発達した。険しい山間を何カ所もの長大
橋で直線的に結ばれ、長崎県側の多良岳レインボーロードに接続されている。尾根の斜
面にミカン畑が続く。「スーパーで太良みかんを見かけるわ」と相方は言う。「ここか
ら出荷しているのか」目に焼き付けた。時折、広大な有明海の眺めが見え隠れする。絶
好のドライブコースである。信号や車も少なく、ナビの最初の予定時刻より20分早く
多良駅に着いた。
 無人の駅舎のホームに入ると、初めて見る「幸せの鐘」があった。板に黒ペンキで書
いてある。この鐘は皆さんに幸せを提供します。「一回鳴らす 幸せを呼ぶ」「二回 
〃 二人が幸せになる」連れ合いと一緒に鳴らした。「三回 〃 皆が幸せになる」 
太良町長・多良駅長。
今は無人駅だからだいぶ前に設置されたのだろう。客を呼び寄せるためのいいアイデアだ
と思う。タッキーこと滝沢秀明さんもロケで来たらしい。
恋人と来ると、二人で和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」と歌いたくなるかも
しれない。
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