総理の重大発表(YouTube配信中)

文字数 1,226文字

 内閣支持率が瀑下がりを暴落し、しかも続落し続けていた。
 もう思い切り崖っ淵だ。
 そんなある日、内閣総理大臣の崖之淵は総理官邸のとある個室で用を足しながら、だらだらと考えを巡らせていた。
(ええい!このままじゃわしの支持率瀑下がりじゃ。わしももうおしまいじゃ。文字通り崖っ淵じゃ。それで、あ~、何か名案はないか。明暗(変換ミス)。いやいや夏目漱石の明暗ではない。ともあれ!起死回生の名案じゃ!う~ん…)

 彼はとある省庁の、豪快に息の掛かった豪快な大物議員の大センセイの、その豪快な後ろ盾により、豪快に総理大臣に…、それももう、何かの内輪もめの果てに、もう棚ぼた的に、そして豪快にまぐれで総理大臣になることが出来ていた。
 そういう豪快な事情もあり、だから彼はその大物議員にも、もちろんその省庁にも、絶対にタテつく訳にはいかなかった。仮にもタテつこうものなら、政界から抹殺されるやもしれぬ。だけど支持率瀑下がりじゃ、もう失脚するのは時間の問題。
(…じゃからもはや、あの省庁の息の掛かった大物議員のあの大センセイのお方に義理立てする必要もない。あの省庁にも義理立てする必要も、ぜ~~~ん然ない。義理立てしようがしまいが結果は同じじゃ。じゃからもう失うもの何もないもんね。いやいやそれに、これからの余生、田舎で普通に生きるぶんには、年金と、ある程度の貯金もあるし、(誰かに殺されない限り)百姓でもやりながら、十分に生きていけるんじゃけえ♪)

 彼は少し前向きに考え始めた。
(だからこのまま総理の椅子から引きずり降ろされるくらいなら、総理を投げ出すくらいなら、一発逆転…、つまり国民が大いに喜んでくれる政策をぶち上げ、あとは野となれ山となれ。この政策をぶち上げれば国民の皆さんは歓喜し、マスコミも豪快に応援するだろうし。それでその後その省庁が、どんなにわしに嫌がらせしようが、わしのスキャンダルを暴きまくろうが…、あ~、例えばわしが小学校三年生のときに学校帰りにあぜ道で、もう我慢出来ずに野糞したことを暴かれようが、もう構うことはない。とにかく!ぶち上げれば国民の皆さんは歓喜し、わしは後世、少なくともダメ人間、ダメ総理と嘲笑われることはないのやもしれぬ。いやいや、やもしれぬぞ!じゃから今から早速独断で発表するぞ。閣議決定もなにもあったものじゃない。よし!決めた!今決めた!何も決められんとはもう誰にも言わせんのじゃ♪)

「え~、番組の途中ですが、ここで急遽、え~、総理の緊急の会見が行われる模様です。それでは国会記者会館より中継をいたします」
 ぱっ!(画面切り替わる)

「国民の皆さん。あ~、私はこの度、重大な発表を致します。それは、あ~、いいか!野郎ども!耳の穴をかっぽじってよ~く聴きやがれ!あ~~、来年1月より、あ~~、消費税は豪快に廃止じゃ!」
(え?わいわいがやがや)
「廃止じゃ廃止じゃ廃止じゃぁ~!」
(なんだなんだ何事だ!)
「私は嘘は申しませぇ~~~ん!」
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