客の来ないラーメン屋

文字数 274文字

 彼は長年ラーメン屋で修業を積み、大層腕も良くなって、そして念願の自分の店を持った。
 そのラーメンは独特のやや太くて短めの麺で、ラー油が利いていて、それに紅ショウガも利いていて、隠し味にトマトも使ってあり、独特の麺は少々赤黒く見えたのだが、いずれにしてもその味は最高だった。
 それで彼は、そのやや太くて赤黒く見えるラーメンのサンプルを、誇らしげに店の前に置いた。
 だけど残念ながら、さっぱり客は来なかった。

 実は彼は「美々津さん」という方なのだが、私はただ単に、その店の名前が悪かっただけだと思っている。
 何てったってその店の名は「ミミズラーメン」
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