転生したらボンクラになった件

文字数 974文字

 ある日突然、僕の目の前に見慣れない魔王が現れ、それで僕は魔王に相談したいこともあったので、その魔王に訊いてみた。
「あの…、僕、これまでいろんな魔王に頼んで、何度も何度も転生させてもらったんです。転生して転生して新しい異世界で…、それで、転生したら次は素晴らしい異世界かもって思って、そこで無双できるかもって思って、だけど新しい異世界新しい異世界と、転生すればするほど、どんどん学校の成績が落ちて、もう偏差値は下がりっぱなしで…、これっていったいどうしてなんでしょうか?」
「転生すれば前世のものをだいたい継ぐ訳じゃが、全部引き継げる訳ではない。とりわけ、知能指数に関しては概ね8割しか、次の異世界には持っていけん」
「転生したら、ぼぼ、僕の知能指数は8割しか次の異世界に持っていけない?」
「あたりまえじゃ。そうやって転生させる者の知能指数の2割をマージンとして頂戴し、それを魔界で売りさばいて魔界の貨幣に変え、そうやって、あ~、魔王というものは食っておるのじゃ」
「僕の知能指数の2割をマージンとして…」
「さすればお前さん、これまで何回転生したのじゃ?」
「ええと…、8回、ですかね」
「そうか。それでは計算してみよう」
「計算?」
「そうじゃ。一回転生すれば知能指数の2割をマージンとして取られ、つまりその前の8割の知能指数で次の異世界だやっていくわけじゃ」
「次の異世界は8割の知能指数で…」
「よいか、計算するぞ。わしはこういう時のために魔界の電卓を持っておる。しかし、あ~、これは人間界の電卓とたいして変わらんが」
「ありゃりゃそうですね。それって普通のカシオの電卓みたいですね」
「これは魔カシオの電卓じゃ。それじゃ、ええと、転生は8回じゃったな」
「そうです」
「よし! 願いましては、0.8×0.8×0.8×0.8×0.8×0.8×0.8×0.8=0.1677216じゃ」
「なんですかそれは?」
「つまり転生を繰り返したお前さんの現在の知能指数じゃ。それが現在、オリジナルの0.1677216倍ということじゃ」
「はぁ?」
「つまり現在のお前さんの現在の知能指数は、四捨五入して、概ねオリジナルの0.17倍、で、元が100だったとすると、100×0.17=17、つまり知能指数は17じゃな」
「僕の知能指数が、17?」
「すでに相当なボンクラじゃな」

 次の話へ続きます

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